大学教員が暇だと思われる理由
「大学教員って暇そうだよね」 ということを会社で働く人、特に年配の人にいわれること数えきれない。
大学教員は実際に暇なのでしょうか?あるいは暇そうに見えるだけなのでしょうか?
大学教員のほうが、会社で働く人より暇かどうかの結論から言うと,分からないです。何故かというと,大学教員というくくり,会社で働く人というくくり、それぞれが曖昧で広すぎることです。
そして2つ目が,会社で働く人の想像する,大学教員 のイメージは,多くの場合は自身が大学生のころに見ていた自分の大学の大学教員だからです。例えば,40歳の会社員が持つ大学教員のイメージは約20年前の教員の実態である可能性が高く,現役の今を働いている大学教員の実態や感覚とは,大きく乖離するだろうということです。そこで,今回は、私が経験した,私が見聞きした範囲で考察したいとおもいます
前提
大学教員とは今現役の先生,およそ50歳~28歳程度
分野:工学系(機械工学,ロボット工学,自動車工学,人間工学などなど)
大学:主に首都圏私立大学(中央大学,法政大学,慶應義塾大学,東京電機大学などをイメージ)
1) 働く時間の違い
大学教員の勤務に実際として定時がないです。雇用契約上は月曜~土曜勤務ですが,日曜日も頻繁に仕事はあります。祝祭日も授業や行事があるので出勤することのほうが多いです。逆に言えば,授業担当のない平日の日中に休まざるおえないの場合もあります。これは場合によっては,そのタイミングで歯医者なり病院なり、銀行なり、散髪とか、あるいは買い物なんかに行きます。そのため、平日日中プラプラしているように見えるのかもしれません。
この日中に時間をつくりやすいというところに自由度を感じ、そしてそれが暇そう という風に変換されるのかもしれません。
2) 働き方の違い
大学教員の場合,成果報酬が基本存在しません。定時勤務という概念は実態としてほぼないです。授業数,委員の担当数や,受け持つ学生数,働いた時間などで,給与がほぼ変化しません。手当がつくのですが実際にそれらの担当で増減する労力(時間)に対して最低賃金を余裕で下回る程度の手当しかつかないからです。なお手当なので、違法ではないとの理解です。言い方をかえれば,授業担当を最小まで抑えて,委員も全て断り、学生の受け入れ数も絞るなどして仕事内容を最小まで抑えても給与の変化が少ないといえます。なおそういういわゆる学務を極限まで減らす先生の多くは、さぼるために教育業務を最小限にしているのではなく、研究に軸足をおいている場合が多いです。もちろん教育、大学運営業務、研究の3つを両立するすごい先生も多々いますが、全部をこなすのは時間的にも体力的にも無理だからです。そして、どれに軸足を置くか、つまりルール違反とならない範囲で教育業務を最小限にすることは、所属する学科や学部、つまり職場の同僚が納得していれば問題とならないです。
そういう研究で超多忙な先生は、その先生の研究室に所属しない限りは他の学生からは、殆ど授業をもたず学校でも見かけない、教育にも熱心でない先生に見えて、それを暇そうな先生と誤解している場合も散見されました。実態は、世界中をかけまわり、研究活動をしている超多忙な先生でもです。大学の研究について、価値がないと考えている人には、この研究で忙しいといことは個人の趣味が忙しいのと同じだ!という言い方をされるかもしれません。しかし世界的にみれば大学の研究活動は国力を高め、未来への投資につながるものと位置づけられています。そして日本は、大学研究をはじめとして研究に対して世界的には予算も規模も(人数)も少ない状態です。そのため社会全体で研究業務を担う人が少なく、身近にいないために、勝手なイメージがつくという可能性も考えられます。
3) 大学教員のイメージは更新されない
大学教員が仕事が忙しいと、新橋に飲み屋で管をまくことはほぼないです。大学教員と会社員で働く人の接点は、同級生や友人、あるいは企業との共同研究となる場合が多いからです。そのため、大学教員のイメージは、その人の学生時代のまま、あるいはその人が学生の際に所属した研究室の先生のイメージから更新されない場合が多いのではないでしょうか。
4) 大学教員という肩書の広さ
テレビのコメンテータに 名誉教授、特任教授 などなど、色々な大学の先生の肩書の人が出られています。それを毎回テレビで観ていると、まるで大学教員は沢山テレビにでられるほどの時間があるように思えているのかもしれません。違います。大学で教育研究を主に担っているの先生と、テレビのコメンテータによく出演される大学の先生は、異なる大学教員です。もちろん、双方を両立しているスーパーな先生もいますが、それはレアケースとおもいます。カレーをストローで飲むくらいの効率化が必要になります。テレビでよく見る大学教員については、今回の議論では想定していません。
さいごに
様々な視点から、大学教員が暇そうにみえる理由を考えてみました。考えてみましたが、それぞれの人が何故そういう認識になるのかは何か調査でもしてみない限りは分からないです。私もJTC勤務を辞めて大学教員になってから何度も暇そうでうらやましいと言われてきましたが,もう慣れました。 どちらにせよ、相手の状況や実態をよくわからずに、「暇そうでいいよね」というような人と仕事はしたくないし、友達にもなりたくはないということは言えるかもしれません。