博士課程進学,親に反対されました。どうする?
博士課程に進学予定の修士学生の皆さん,親に反対されていませんか? 私もそうでした。今回は,親をどう説得したかについて説明します。
1)なぜ親は博士進学に反対するのか?
理由はおそらく,博士進学が少数派のため,良くわからず不安だからだと推察します。大学への進学率が上昇し,現在は大学院への進学率も高まりつつある。特に理系では,大学院進学率が高い大学や分野が多い。例えば東京科学大学(旧 東京工業大学)は修士課程への進学率は近年9割を超えています。このように,理系の修士進学率が上がり,初めての岐路,つまり多数派か少数派かの判断は,博士課程への進学になってきているかもしれない。
高校から大学へ進学する際に,進学を推奨された人が多く,就職を推奨された人のほうが少ないかもしれません。もちろん金銭事情や,地域,家業など様々な背景があり,大学に行くのが正解とは考えていません。そして,理系に進んだ場合,大学院に進む学生は6~9割程度で,多くの大学で多数派になっています。 そのため,現在では大学院にいくことを強く反対されない場合が殆のようです。このように日本でも理系では4年で卒業して社会に出る学生のほうが少なく,修士2年間を経て社会に出るのは普通(多い)という環境も増えてきています。大学から大学院に進学する際は,親が進学を想定しておらず学費の支払いを断るケースは散見されますが,それ以上の反対はあまり見ません。
一方で,博士課程への進学となると,どうでしょうか。博士課程への進学は,少数派で,一部の修士学生の進路でしょう。修士で就職か,博士進学かが,理系学生にとって人生で初めての岐路かもしれません。そして,親に反対される場合もあると思います。博士進学の課題は,金銭面の不安も多いとおもいますが,親や周囲の理解がもっともハードルかもしれません。 もちろん博士進学する際は成人しており,一人の大人として判断を尊重されるべきです。しかし,現実問題として,学費や住居(同居),生活費については親の協力が必要であったり,それらを自分でバイトや奨学金,特別研究員等で補ったとして,家で色々と言われるのは精神的につらいとおもいます。近い存在だけあって,やはり親の理解はあってこしたことはないでしょう。
2)どうやって説得したか。
ちなみに私も,もちろん反対されました。「なんでそんな勉強する必要があるの? 働いてもいいんじゃないの?」というような意見でした。やはり,自分の子供が少数派になるということへの心配は多いと思います。自分の子供が,20代後半で“働いていない”という状態を心配に思うのです。そこで,私は以下5点を親に説明して納得してもらいました。
・ 授業料免除を獲得すると説明
大学院の授業料免除申請する。(残念ながら私が博士になった年度になくなりましたが)
・日本学術振興会の特別研究員DC1を獲得すると説明
DC1を獲得して,生活費は全て自分で支払うことを条件としました。
・生涯年収では十分巻き返せる可能性があることを説明
過去の統計から,製造業の分野では,学部卒以上の生涯年収が期待できることを説明。
・博士修了時には民間企業にも十分就職できることを説明
博士修了時でも民間企業で求人があることを説明。
・近い未来,むしろ博士修了者のほうが生涯年収が高いかもしれないと説明
グローバルには博士号を持っている人は高収入の場合が多いこと,この先のグローバル化が進めば,むしろ学卒よりも安泰かもしれないと説明。
以上の説明で納得してもらいました。親の心配は基本的にお金の話だったので,納得してもらいました。結果的に修士課程の生活費や博士課程の授業料も生活費も自分で支払っているので,そこまで強く反対される筋合いもないように思いますが,やはり心配だったのかもしれません。博士課程在学中はグチグチ蒸し返して反対意見を言われることはなかったので,先手で説明しておいてよかったと思いました。
博士進学しようと考えていて,親に反対されている大学院生がいたら,少しでも参考になれば幸いです。
なお,余談ですが私が民間企業をやめて任期制助教になる際は,理解を得ることはできせんでした。しかし,私の人生ですから気にせずアカデミアにもどりました。