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熟年妻たちに共感しかなかった話


冷めきった熟年離婚と新婚の我が家がなぜか共通!? 


私が結婚を決めて帰国した頃、日本は熟年離婚がブームになっていました。年金分割が可能になって熟年離婚が増えているということでしたが、私がこのニュースに釘付けになった理由は妻たちが語る夫像でした。それは、結婚してからのモトオがそれだったのです。

妻を粗末に扱い、尊重もしない冷めきった夫というのがその特徴でしたが、遠いアメリカに足繁く通い、求婚してきたモトオがなぜ当てはまってしまうのか? 全く理解できませんでした。


近所のおばちゃんたちとの立ち話


ある日、近所のおばちゃんたちと立ち話になったのですが、一人のおばちゃんが「じいちゃん(自分の夫)が人の言うことを聞かない。人にやってもらってるのに感謝がない。家事を馬鹿にしてる。ボケてきたんじゃないかと思う」と話し始めました。

すると、もう一人のおばちゃんが「男の人はさ、みんなそんなもんじゃない?」と言って笑っていたのですが、そのボケた言動というのがモトオの言動にも当てはまりました。

おばちゃん達の愚痴を聞いていると、私の夫もその中の一人なのかと多少の慰めになりましたが、だとしたら日本にはそんな男性が大勢いることになり、がっかりしました。


発達障害と認知症の共通点


私が「うちの夫もそうなんですよね」と言って加わると、最初のおばちゃんが急に真顔になって、こう言いました。

「まだ若いんだから、そんな訳ないでしょ!? 結婚してそんな経ってもないのに。 うちのじいちゃんなんか、絶対認知症、始まってるからね」

つまり、歳をとって脳の老化と共にどんどん偏屈になってきてるという話だったのです。

認知症疑いの老人の夫と発達障害のまだ若いモトオは、脳の認知機能障害において共通していたのでした。

その時は、私もなぜこんなに共通するのか、発達障害を知らなかったので分かりませんでしたが、脳の老化現象は前頭葉に起きやすく、そこが不活発になることで、感情のコントロールが難しくなったり、頑固になったり、人の意見が聞けなくなったり、怒りや不機嫌のコントロールもできなくなったりしてコミュニケーションに難が出てくるというものでした。まさに発達障害じゃないか!?と、それを知った時は驚愕でした。

モトオの特性が歳を追うごとに酷くなっていったのもそもそも持っている特性に脳の老化が加わって酷くなっていたのかもしれません。彼の場合、その間修正が入ることもなかったので、彼が思い込んでいる真実Aが、実はBだと私が言ったところで変わるわけがなかったのです。


同じ脳機能の問題なのに、発達障害だと個人の問題にされる


こんなにそっくりな認知症と発達障害ですが、周囲の理解とその対応は全く違うのでした。

認知症は本人がどう隠しても、家族が訴えれば理解され支援が受けられますが、発達障害だとそうはいきません。

実際、私が発達障害支援センターに相談した時、診断の降りた娘が小6で夫は普通に働いていると伝えると、できることは何もないと言われ、婦人相談に電話すると「相手がモラハラで嫌なら別れるしかない」と言われ、当時していた絵本やイラストの仕事は「食べていけないなら諦めるしかない。別れるなら、ちゃんと働かないと」と言われました。正論なんでしょうが、今までしてきたことが全て無駄になったと知り、悔しかったです。


迷惑行為だったとしても、本人の自覚がない限りそれは永遠に続く

悪気も気づきもない当事者と暮らすことは、常に何らかの我慢を強いられることになります。我が家の二人は出来ない事、やりたくない事だらけで、嫌でも私に負担が掛かりました。迷惑行為は言っても本人が悪いと思っていないので永遠に繰り返されるのでした。

けれど、人は我慢を続けると常に不平不満を感じるようになり、周りからも理解されないので孤立していくことになりますから、気をつけなければいけません。

最近、当事者には少ないながらもいろいろな支援が用意され始めていますが、カサンドラには殆ど何もありません。せいぜい自助会などに参加して、自分の身を守る術を学ぶくらいしかなく、子供の支援を一人でやらなければいけなかったり、経済的な自立に忙しかったりすれば、心身の健康も脅かされることになります。

カサンドラに一番必要なのは、意識して距離を置くこと。発達障害の人との具体的な関わり方を知るのは大切です。それと中立的に判断してくれる理解者或いは通訳者を見つけることではないかと思います。

専門の窓口なのに知識も技術も乏しい人に出くわすことは多々ありますが、一人で我慢せず、諦めなければ、必ずいい方向に向えるはずと信じています。

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