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悪者は誰だ?
健康的な食事をする上で知っておきたいのが「食べないようにするべき食材」ではないでしょうか。
これについての情報は巷に溢れていますね。
その中でもメジャーなのは、「砂糖・小麦粉・アブラ」でしょうか。
これらについて、薬膳ではどのように捉えているのか、と尋ねられることがあるので、私見も交えてまとめておこうと思います。
砂糖
![](https://assets.st-note.com/img/1667022205435-CJvsffXH66.jpg?width=1200)
砂糖のつく食材で、私が通った学校の教科書に載っているのは3種類。
白砂糖、黒砂糖、氷砂糖です。
白砂糖もちゃんと載っているんですね。とはいえ、現代のグラニュー糖ほど真っ白ではないです。
が、甘〜いのには違いない。それでも「薬膳素材」として扱われていたわけです。
それぞれの四性五味帰経と効能をあげてみます。
白砂糖:甘/平・脾 潤肺生津・和中緩急
黒砂糖:甘/温・肝脾胃 補中暖肝・調経・和血化瘀
氷砂糖:甘/平・脾肺 補中益気・滋陰止汗
よく白砂糖は体を冷やすと言われますが、薬膳的には平性なので、特に冷やすことにはなりません。
しかし、他の2種類が補中メインなのに比べて、潤肺が最初にきています。しかも津液を生み出す。潤すし、体液を増やすとなると、温める力の足りない人は冷えの素を作りだすように感じるかもしれません。
和中緩急とは、お腹をいたわり下痢になりそうなのをゆるゆるいたわる、というような意味です。
黒砂糖は肝にも影響するし温性なので、冷えると痛む生理痛のある人は、白より黒の方がいいかもしれません。
調経の力は、経絡を調整するという意味よりは、月経のコントロールの方がしっくりきます。その後の和血化瘀も、瘀血をほぐして血の巡りをいい感じにするというような意味なので。
氷砂糖も現代の氷砂糖のように透明なものではないです。
これはお腹の力を補うだけでなく、気を増やし陰も増やしてくれる、補いパワー満載の食材です。
気が足りないと「腠理」が開いてしまって汗が出やすくなるし、陰が足りないと寝汗が出やすくなります。氷砂糖は気陰を補うことで、日中も夜間も汗を抑えてくれるようになるわけです。
このように、3種類ともしっかりしたはたらきがあります。では何故悪者扱いされているのか。
単純に、現代は砂糖を食べ過ぎなのです。
水ですら、多すぎれば毒になるのは科学サイドでも証明されています。
甘い味は「補」の力を持ちます。砂糖を摂り過ぎれば、補いすぎる。特に白砂糖は体液過多になります。
体液が余分にあり過ぎれば、むくみ、セルライト、肥満。
余分な津液は痰になりますから、めまい、疲労感、頭重感なども起きて当たり前。
そして、砂糖を一気に摂ると、科学サイド的にはインスリン分泌の乱れが起き、糖尿病になったりします。
また、口の粘膜に飴を当てておくとガサガサしてくるように、血液の中に糖分が多くても同じようなことが起きて血管が脆くなります。
砂糖の悪いところはこういうところ。
そして砂糖の良いところは前述しました。
つまり、少量の砂糖を、使うべき時に使うのが良いわけですね。
そうすれば、砂糖は全く悪者じゃない、ということです。
小麦粉
![](https://assets.st-note.com/img/1667022153593-cP5OM4G617.jpg?width=1200)
次に小麦粉です。
小麦:甘/涼・心脾腎 養心安神・益腎・清熱止渇
小麦もちゃんと薬膳的効能があります。
心の臓を養って、精神を安定させてくれますし、腎を元気にしてくれます。
熱邪をはらって喉の渇きをおさめる力もあるらしいです。あんまり実感湧きませんが。
この効能は、小麦全体なので、精製された小麦粉だとちょっと違ってきます。全粒粉で考えてください。
小麦粉が悪者にされるのは、グルテンのせいが多いですね。グルテンに代表されるタンパク質による小麦アレルギーも増えているとされます。
でも、小麦(またはグルテンの)アレルギーではなく、セリアック病などの特定の疾患でもない方は、特に小麦を避ける必要はないと考えるのが論理的かと思います。
ただ、問題は別のところにもあるかもしれません。
よくあるのは「パンをやめたら体が軽くなった」というような話。その場合、本当に小麦が悪かったのか?という議論があまりされていない気がします。
気軽にパンを食べる人の中には、添加物がたくさん入ったパンを食べていることが多い人もいるでしょう。その場合、小麦ではなく、添加物が悪さをしているかもしれません。
また、麺類でも、ラーメンの中には化学調味料や背脂など小麦粉以外の体に負担のかかるものがたっぷり入っている場合があります。
そもそも麺類は「ツルツル」いけちゃうというイメージから、早食いになりやすいのもポイントかもしれません。
早食いになることで、消化器に負担がかかり、小腸大腸のバランスが崩れ、アレルギーなどにつながることもあります。
こうしたことの実体験と「グルテンフリーは体に良い」という情報が合わさって、パン・麺が悪い、小麦が悪いという風にすり替えられてしまってはいないでしょうか。
さらに、小麦の中にもいろいろあるよね……という話もあります。一概に全部ひっくるめて小麦が悪いとするのは、少し乱暴かもしれません。
また、日本人なんだから和食推奨!小麦はNO!というのも、いかがなものかと。だって、和食には「麩」というものがありますから。あれ、グルテンの塊です。
アブラ
![](https://assets.st-note.com/img/1667022093166-TWcn3WfsNs.jpg?width=1200)
アブラは悪者扱いされてから歴史が長いですね。血液検査で引っかかる人が多いせいもあるでしょうか。
菜種油:温・辛/肝脾肺 通便
大豆油:熱・辛甘/大腸 潤腸通便・駆虫
ごま油:涼・甘/大腸 潤燥通便・解毒
ピーナツ油:平・甘/脾肺 潤腸下積
と、このように、「通便」つまり便秘解消のチカラを持ったれっきとした薬膳素材なんですね。
特に、便や腸が乾燥して起きる便秘に良さそうです。(便秘にはこの他に、熱邪のせい、排出力が足りないせいなど、原因の違うものがいくつかあります)
常温で液体のアブラ(油)は、大体同じような効能かなと。
四性がそれぞれ違うけど、油を多く摂ると湿熱が溜まりやすくなるのも共通と思って注意してください。
常温で固形のアブラ(脂)の代表格は、現代日本ではバターでしょうか。
他にもヘッド・ラード・鶏油などもあります。それぞれ元の動物由来の香りがあり、風味がついて味が深くなるので、料理人さんは使ったりします。
バター:甘/寒・心肺 補五臓
バターは液体の油と違って、補う力を持ちます。
鶏油は陰を補う力だったり、脂はどうやら補う系のようです。
常温で液体の油より、体に溜まりやすそうですね。
油も脂も、陰や湿、潤いなどと繋がっていそうです。これを多く摂れば、湿邪や痰が溜まりそう。痰は瘀血と結びつけば脂肪になります。
しかし、少量を適度に使えば、便通が良くなり、肌や髪が潤い、五臓が元気になるので、これも悪者として完全に排除するのは悪手のようです。
科学的には、脂質は、ホルモンや神経細胞の鞘や、新しい細胞の細胞膜などを作るのに不可欠です。中医学だけでなく科学サイドから見ても、アブラは悪者じゃないんですね。
では、悪者は一体??
まとめ
察しの良い方はもうお気づきでしょう。
悪者はどこにもいない。
強いて誰かを悪者にするならば、悪いのは我々人間です。
使い方が間違っているのです。
我々人間がたくさん摂りすぎると、食材はその力を持て余し、余分に仕事をしてしまいます。大勢で仕事場(食材にとっての仕事場は人体)に来たからと言って、手を抜いたりしない。
補いすぎる。溜まりすぎる。
つまり太る。
血中に溜まる。
むくみになる。
だから、使う側が適材適所で、タイミングよく、使ってあげる必要があるんです。その存在自体が悪い食材はない。
上手に使って、楽しく美味しく養生していきましょう。
こんな感じで、
薬剤師で国際中医薬膳師ならではの
古今東西の知恵を継承したくて、
オンライン講座、その名も【継】やってます。
詳しくは公式サイトで。
http://watarilab.com/kei/
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