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すがかて at オーベルジュ玄珠

美味しい物をより美味しく食べる。
結果的にゆっくり食べることになる。
その成果として、体とこころが清々しくなる。
そんな食べ方が「すがかて」
普段のごはんでもやりますし、レストランに行ってもします。
そして今回、オーベルジュ玄珠さんでもしてきました。

 すがかてのデメリットは、食べてる途中で全く食べることをさぼらないのに、時間がめちゃくちゃかかること。前回カッシーニさんでの時も、周りの1.5倍くらいかかりましたが、今回も早々に食事を終えていかれる周りのお客様方。厨房の皆さん、すみません…(そして、レポもスゴイ長さになるので、抜粋していきます)でも回転率命の丼屋さんやラーメン屋さんなどでは、これはやりません。その辺は一応弁えております。
というわけで、すがかてatオーベルジュ玄珠さん!3度目のお邪魔です。
 今回も、お酒はお料理にお任せで合わせていただくようにお願いしました。

 五感を全て使うのですから、まず視覚。ものによっては運ばれてきた時から嗅覚。そして箸が触れる触覚。口に入れて味覚・嗅覚。噛み潰す触覚。口から鼻へ返っていく嗅覚。のど越しの触覚。という具合にかなり時間がかかりますよ。覚悟はいいですか?

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 まず前菜。奥右手から順番に。一番左がすっぽんなので、右から。
 冬瓜の炊いたの。白い半透明の実と皮のほんのり緑が涼しげでよいですよね。体の熱をさましてくれるチカラと相関する見た目。噛むと割れて出汁がくしゅっと出てくる。その感触が楽しい。塩気や醤油などの味は少な目になっているからこそ感じられる冬瓜の淡いにおい。そこにえごまのソースのクリーミーさが意外に合う。
 次は筍。種類を忘れてしまった……穂先なんですが、歯触りが普通の穂先よりしっかりしてます。見た目もときんときん(美濃・尾張弁)ですもんね。シャクシャク・サクサクとコリコリの間くらいの食感。
 かぼちゃ。一番外側のパリとした皮は剥いてあって、優しい緑と黄色がグラデーションできれいです。出汁がしっかりしみていて。ほっくりではないんですが、繊維っぽくもない。しっとりやわらかくてほんのり甘い。
 そしてこのトマトがまたうまいんです。同行者は見た瞬間に「このトマトがね!」と言ったほど。前回もあったんですよね~。湯剥きしてあって、舌にのせるとトマトの酸味とほのかな甘みがすっと感じられる。つぶすとお出汁とトマトの果汁とがじゅわっと混ざって美味しくて、鼻からふむーと息を抜くと、そのうまみと香りが抜けていく。こんなに小さいのにバラエティがすごい。良く知っている食材だけに、味わおうとすればまだまだ魅力が出てくるわけで。これ以外の慣れていない食材も、何度もいただけばもっと様々な魅力が出てくるんでしょうね。
 すっぽんの煮凝り。すっぽんのにおいが軽く。臭みがないんですよね、いわゆるすっぽんの。噛むと、身の部分が多めだったので、ある程度しっかりとした弾力。そこにすっぽんのコラーゲン質がとぅるりとまとわりついている。しつこさはなくて、すぐに消えるのがいいですね。
 手前左の鰻の押しずし。土用の丑の日だったので。見た感じ、タレがべたついてなくてそれだけでもう嬉しい。お米の詰まり具合もぎちぎちじゃなくて期待大。それでもタレの甘辛いのと鰻の焼けた香ばしい香りはしっかりと。口に入れるとやはり、鰻もお米もほろほろとほぐれ、簡単に混ざり合い、お米一粒ずつにちゃんと鰻の味が乗る。鰻のうまみって、脂がメインみたいに言われますが、ちゃんと肉質としてのうまみもありますよね。ごはんが柔らかすぎたり詰まりすぎたりすると、それを感じられないように思います。
 右下はあまごのコンフィ。お腹の模様が見えるくらい焦げがついてないのに、香ばしい。そして箸を入れるとコンフィならではの柔らかさ。ほわっとした柔らかさ。柔らかさって、ほわっとか、ゆるっとか、ぷにっとか、むちょっとか、色々ありますよね。口に入れるとふにっと無くなる。木の芽ヨーグルトソースの香りと酸味がまた良いです。つけすぎないのがコツですよね、こういうの。そして、一粒だけ乗せられた山椒の実が、アマゴの柔らかさやうまみを引き立てます。
 最後は真ん中の「玄珠最中」。最中の皮の中身はチーズと、ご当地ブルーベリーのジャム。前回まではチーズがフロマージュブランだったので、もうこれだけでコースが完成しちゃう勢いでしたが、今回はゴーダチーズになってました。最中の独特の香ばしさと味がまずあって、そこにブルーベリーの甘さと香り。次にゴーダチーズのしっかり目の塩分と臭みが来ます。順番に来るこれらの味と香り。ぱくっと食べてすぐ飲み込んでしまうと味わえません。ゆっくりだからこそ。私はフロマージュブランよりこちらの方が好みでした。

ここまでが前菜。前菜は品数が多いので、大体他のお客さんとここで差が大きくつきます…。大体30分はかかります。amuse的にバクバク食べちゃうと5分とかからない。けど、それだとこんなに満喫できません。昔はそうだったな。レストラン勤務時代ですら。
 とまあ、こんな感じで最後まで食べているとゆうに3時間になってしまうわけです。後半焦ることもあり、それはそれでもったいないので、もう少し上手にペース配分したいなと。そして、記事としては飽きてきていると思いますので、お料理の紹介だけ続けておきます。

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すっぽんの茶碗蒸し。白い丸いのは卵とのこと。鶏のたまひもみたいなもの?ほんとに臭みがないのがすごいなと前回も今回も。でも独特のにおいはあって、ちゃんとすっぽんなんです。卵のちゅるん具合もとてもいい。

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右奥が鮎のお刺身。中々出会えません!苦味がない。香りはある。そして左がなんだったか忘れてしまったのですが、川魚なのにカンパチみたいな濃い味わいでびっくり。穂紫蘇の香りとバランス良かったです。手前はあまごをあぶったもの。あぶりは鼻から抜ける香りが溜まらないので、すがかて向きです。

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焼きものもすがかてしやすい。今回のメインはこれ!でしたが、コースのメインはまだ続きます。郡上や飛騨の鮎は、ほろ苦さがしっかりしてて、肝の香りもとても好きです。肝の香りは強めだけど、身の香りは淡いので、しっかりと鼻から抜いてあげると感じやすくなります。
川魚は背中をこちらに向けて。頭の向きは色々あるみたいです。川を昇っていくイメージだそうです。

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すっぽんの焼き物。これも珍しくないです?私はこちらに来るまでは丸鍋しかいただいたことなかったです。ぷにというか、くにというか、弾力のある肉質とコラーゲンのねちねちした感触が同時に来る。唇にそれがまとわりつくのもすっぽん食べたなーって実感。骨の周りにもねちねちが付いてるし、骨からもうまい味がするので、しっかりしゃぶりつくす。お行儀は悪い。
端に見えているのは料理長の早川さん。

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バーニャカウダ。エディブルフラワーとトウモロコシと焼きナス。具材もさることながら、これはソースが大勝利です。アヒージョみたいなバーニャカウダしか食べたことなかったので、このしっかり乳化されたとろとろのミルキーな焦がしバターソースは絶品でした。ブールノワゼット。

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左は先ほどの残りです。右があじめどじょうの揚げ物。さくさくで香ばしい。そこばかり意識が行きがちだけど、上手に揚がっているとしっかり魚の味がするので、かみしめながら唾液をしっかり出して、その味をとらえたいところ。
ここまでは玄珠さんのオリジナル日本酒2種で。片方は現地で購入できます。

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奥が鹿、手前が鴨。赤ワインと共に。ポピュラーにうまいので割愛。

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メイン再び!鮎ごはんです。土鍋で炊かれて、鮎がきれいに並んでる状態を見せてくれます。そこからしばし蒸らして、盛り付けて。嗅ぐ香りも鼻を抜ける香りも美味しい。鮎の味がしっかり分かる量の鮎。二杯目は薬味を入れて、苦めの煎茶でお茶漬け。大葉の香りとお茶の苦味で胃袋がしゃきっとして、まだいけるって気がします。
しかし実際はもうかなり前から満腹。食べ過ぎです。

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水菓子。岐阜の清んだお水で作られたまさに水まんじゅう。(別の形のが同じ岐阜県の銘菓にありますが)食感を楽しむお菓子だからこそ、要らない味やにおいのない素材が肝心です。
岐阜県は日本一暑くなる街もありながら高地もある。様々な食材が育てられます。メロンと桃。口に近づけただけでそれぞれの香りが強く感じられる。どちらも、舌と上あごでじゅぶっとつぶれてしまう柔らかさ。たっぷりの果汁があふれ出し、同時に香りが更にひろがる。のど越しも優しいし、その後にもまだ鼻に香りが抜けていきます。食事の余韻。
大変おいしゅうございました。(岸朝子さん風)

そして朝ごはん。こちらもこのボリュームで1時間強かかります。

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 食レポならぬ、すがかてレポ。いかがだったでしょうか。
 言葉に出来ていないものもあるので、実際にはもっともっとたくさんの美味しいを味わっています。一食でそんなにたくさんの種類の美味しいを感じられるって最高じゃないです?是非みなさんもやってみてください。
 簡単に言えば、味覚嗅覚だけじゃなく、五感をフル活用し、美味しいものをより美味しく食べる為の「たべかた」がすがかてです。お料理それぞれの最初の一口だけでも。
 タンパク質の焦げの香りと旨味は、鼻から抜ける時に幸せを運びますね。茶色い樽熟成のお酒も同様にメイラード反応が起きていて、キックバックを味わいやすい。あとは、果物も割としやすいと思います。
 もう少し詳しく……
すがかてとは→「すがかて」もぐもぐワーク
           →ゆっくり食べる為にできること
 たまに名古屋のレストランでもすがかてを一緒に実行するワークショップ開催しています。ご活用下さい。(やわるしす公式サイトにてご案内しています)

 最後にもう一度、オーベルジュ玄珠さんのサイトはこちら。満天の星空を眺めながらの露天風呂もありますよ。馬瀬川がすぐ近くを流れていて、眺めていると時間を忘れます。ゆとりを満喫してみてください。

玄珠さん1回目 (1)


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