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オンコール無給は許されるのか?
今、一部界隈で話題になっている「あしやまメソッド」からアイディアを頂き、医師の「オンコール無給」が法的に正しいものなのか考えてみたいと思いました。
【背景】
夜間や休日などの診療時間外に、医師が自宅などで待機し、いつでも診療ができるように準備することを一般的に「オンコール」または「宅直当番」と呼びます(以下オンコールと記載)。 「オンコール」の待機時間に対しては、一般的には賃金が発生せず、実労働時間に対してのみ賃金が発生するという慣例になっています。
オンコールを無給とする根拠は旧県立奈良病院事件(注1)の判決で「オンコールの全時間について病院長らの指揮監督下にあったと評価することはできない、すなわちオンコールの全時間を労働時間とすることはできない」と判示されたことが大きいと考えます。
ここで、病院業務の実態について目を向けてみると、実際は病院からの命令によってオンコール待機を行っているのが現状であることが多く、旧県立奈良病院事件であった「病院長らの指揮監督下にあったと評価することはできない」つまり「医師不足への対応のために、医師自身が自主的にやったものだから業務命令ではない」という解釈には当てはまらないケースが多いと考えます。
これらの背景から、オンコールが無給であることは、法的に正しいのかどうかを知りたいと思いました。
【方法】
医療法人なかよしクリニックが、医師を雇用するとし、その雇用契約書を作成する
雇用契約書には、雇用された医師がオンコールに応じて招集する義務を要し、その待機時間は無給であるという内容を記す
都道府県労働局に本雇用契約書を提示し、契約書に違法性がないか判断を仰ぐ
(番外)労働局から法的な判断が明確に提示されなかった場合、公証役場への私署認証の依頼を行う
【補遺】
実際に提出したいと考えている雇用契約書を提示します。
オンコールについての記載は第7条の5をご覧ください。
(医療法人なかよしクリニックは架空の存在です)
医療法人なかよしクリニック(以下「甲」という)と、●●●●(以下「乙」という)とは、以下のとおり雇用契約を締結する。
第1条(目的)
甲は、乙を本契約にもとづく労働条件で雇用し、乙は、甲の指揮に従い、誠実に勤務することを約した。
第2条(雇用期間)
1. 令和●年●月●日から令和●年●月●日までの3か月間を試用期間とする。
2. 試用期間が経過したときは、その翌日付をもって、正社員として採用する。
3. 試用期間中の健康、勤務成績、能力等を評価して、社員として適当でないと認めたときは、乙を正社員として本採用しないことがある。
4. 定年は満60歳とし、60歳に達する月の末日をもって退職とする。但し、乙が引き続き勤務をすることを希望する場合は、65歳に達する月の末日まで再雇用する。この場合は、賃金、雇用期間、その他の労働条件について甲乙の協議により定める。
第3条(就業場所)
●●県●●市(医療法人なかよしクリニック所在地)
ただし、甲は所在地に限らず新設診療施設への転勤を命じることがあり、乙はこれに従わなければならない。
第4条(従事する業務)
従事する業務は外来・入院を含む診療業務とする。
第5条(就業時間および休憩時間)
始業 8時30分
終業 17時15分
休憩 12時30分から13時30分まで
ただし、甲は必要があるときに、乙に対して所定時間外労働を命じることができる。
第6条(休日および休暇)
乙の休日は次のとおりとする。ただし、業務上の都合により、甲は乙の休日に乙を臨時就業させ、または休日を他の日に振り替えることができる。
①毎週土曜日、日曜日
②年末年始
③国民の祝日
休暇については当法人の就業規則に定めるところによる。
第7条(賃金)
1 甲は乙に毎月、基本給80万円および就業規則に定める通勤手当のほか残業代及び時間外割増賃金の支払いに充てるものとして定額の固定残業手当5万円を支給する。ただし、試用期間中の基本給は毎月50万円とする。
2 甲は乙の1か月の残業代及び時間外割増賃金の総額が固定残業手当の額を超えた場合に限り、超過額を別に支給する。その他、労働基準法に基づき、深夜割増賃金、休日割増賃金を支給する。
3 固定残業手当は、乙の残業の量に応じて見直すことがある。
4 甲は毎年9月に乙の成績および甲の業績を考慮して、昇給あるいは降給を行うことがある。
5 第5条の所定時間外労働の規定に基づき、平日の17時15分から翌朝8時30分および休日の間、乙は甲からの出勤命令に備えて待機するものとする。甲はその時間帯に乙へ出勤を命じることがあり、乙はこれに従わなければならない。乙が待機する時間は無給とする。所定時間外労働については、労働基準法に基づき、深夜割増賃金、休日割増賃金を支給する。
第8条(賃金の支給日)
毎月30日締めの27日支払いとする。
第9条(退職および解雇に関する事項)
退職および解雇に関する事項、手続きについては、当社就業規則に定めるところによる。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有する。
令和●年●月●日
甲(住 所) ●●●
(名 称) 医療法人なかよしクリニック
理事長 ●●● 印
乙(住 所) ●●●
(氏 名) ●●● 印
【脚注】
注1: 内容はあらきん先生のnoteに詳しいです