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11月10日(日)尾州久田流茶会 午前
11/10(日)「尾州久田流茶会」は家元のお茶室という特別な空間で、六代当主 下村宗隆家元の温かいおもてなしのお席入となりました。
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お軸の「清心しずかに友を待つ」の言葉通り、お茶室は掘り炬燵式の優しい仕様で、大切な友を迎えるように気さくで丁寧な家元のお話に、お客様方も緊張が解れてお茶室に明るい笑い声が溢れます。
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名古屋の文化事業との事で、たくさんの貴重なお道具の中から地元ゆかりの品々をよりすぐってご準備下さり、鳴海織部の真相や先代と弟子の森川如春庵のお茶碗を巡るお話は微笑ましかったですし、大阪の豪商平瀬家が誤って売りに出した貴重なお茶碗を如春庵が購入してしまい、返却を求められても「絶対に返さない」と意志を曲げない如春庵に根負けして「そんなに気に入ったのなら、その茶碗に合う棗も一緒に」と平瀬家が黒塗の棗を贈り、如春庵は生涯そのふたつの品を大切に手放さなかったというお話は、豪商らしい粋なきり返しと、お茶を愛する者同士の心の交流が伝わってきて、胸が熱くなりました。
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また、釜の説明でもお席によって時代背景や武家らしい「織部好み」といったデザイン性のお話だったり、鉄を型に流す製法の難しさについてだったり、お客様の反応や興味を持たれる方向性によって、同じお道具でも色々な角度からお話くださって、家元の知識の幅広さやお客様方への心遣いが伝わってきました。
「武家茶道は藩士が教養として身につけるもので、地域に根差した流派が多い。名古屋は大きすぎる茶道の勢力が無く、流派同士の交流も多いので、情報交換や切磋琢磨しながら色々な方とお席入するのが楽しい」と笑顔で語ってくださる家元。
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寄付では、桜木を彫った流祖の木像が優しく見守っていました。
外は冬の足音が聞こえる冷たい風が吹きはじめていましたが、温かいお茶と心のこもったおもてなしに、お客様方も「ずっと居たい」と身も心も温まったようでした。
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桜木の木像は、桜の良い香りがするそうです。流祖の木像が優しく香り立つように、家元から滲み出るお人柄も確りお客様方に届いていましたし、流祖の薫陶は確かに受継がれ今も繋がっていると思える、穏やかで温かいひと時でした。
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レポート:近藤加奈子 写真:ゆみ
■レポートしたプログラム
■まちなか芸披露
■やっとかめ文化祭
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