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西村賢太『蝙蝠か燕か』

西村賢太『蝙蝠か燕か』読了。
以前読んだ『芝公園六角堂跡』以上に
一人語りスタイルのため、
登場人物のやりとりを楽しむ小説ではない。
主人公の心の変遷がひたすら描かれている。

ひとつ思ったのが、
主人公にとっての芝公園六角堂跡のように、
原点に立ち返れる場所、
人生のターニングポイントになった場所が
自分にはあるかどうか。

パッと浮かんだのが
浪人3年目を過ごした盛岡だが、
当時はまだ
独り善がりの思い込みで設定したゴール目指し
突き進んでいた時期なので、
ターニングポイントともちょっと違う。

主人公(≒著者)にとっての
芝公園六角堂跡のような存在は、
実はかなり得がたいものなのだと思う。

三浪の目標を達成し、
自己肯定感を回復したという意味では、
盛岡は私にとって
意義のある場所なのかもしれないが。

そもそも
その場所にどんな精神的価値を付けるかは
人間のエゴである、とは思う。
神がいると信じる人には神がいて、
いないと思う人には神がいない。
巨視的にはせいぜいその程度だと思う。

ただ、人の数だけ
それぞれにとって
思い入れの深い場所もあるわけで、
だから面白い。

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