消防設備の在り方を変える?
当社は現在、コロナウイルスの影響から人との接触を伴う現場業務を一時休業しています。
※現場業務とは消防設備の点検や工事のことです。
マンションなどの共同住宅の専用部点検(室内点検)などは、どうしたって多数の人との接触が発生します。
テナントのみの賃貸物件(かつリモートワーク中のためほぼ人がいない)、といった建物でしたら点検も工事も行いやすいのですが、そんな条件が揃った案件はそうそうありません。
そして、この人との接触を避けなければいけない状況は現時点で終わりが見えていません。
そこで奇しくも自由な時間が増えた今、消防設備業で人との接触を減らす方法を模索してみたいと思い、こんな事できないかなぁという妄想レベルからこの記事を書き始めました。
点検で接触を減らすには
消防設備の点検業務は、「人との接触」という面で考えたときに作業を2つのエリアに分類できます。
1つが共用部点検、もう1つが専用部点検です。
マンションなどの共同住宅を例とすると、共用部点検ではこのような項目がよくある消防設備です。
・消火器具
・屋内消火栓設備
・自動火災報知設備
・誘導灯
・排煙設備
次に、専用部点検になると項目は2つ程度に減ります。
・自動火災報知設備(感知器のみ)
・避難器具
そして人との接触機会が多いのは断然専用部点検です。
鍵を開けていただけないと専用部に入室できない=在室いただく必要がありますので、人との接触は避けようがありません。
ということは、自動火災報知設備と避難器具の点検を工夫する術があれば、共同住宅の点検も継続することができるのではないでしょうか?
そこで考えた一つの案が、
「自動試験機能付きの自動火災報知設備の導入を推進する」
ということ。
自動試験機能というのは、共用部にある受信機という機器で感知器の試験を行ってくれるスグレモノです。
この機能が付いた設備を設置している建物では、通常必要な試験器を使った点検(写真参照)が法的に不要になります。
つまり、専用部への入室が不要となるのです。
※ただし、外観点検は必要なため、別途ご入居者様により外観の確認をしていただく必要があります。
自動試験機能の導入メリット・デメリット
専用部への入室が不要となるメリットを備えた自動試験機能ですが、その機能を持つ設備を導入するにあたってはもちろん良い点以外に問題点もあります。
一つは当然ながら工事が必要なこと、そして機器のコストが自動試験機能の無い機器に比べ高額であることが挙げられます。
ということで、メリット・デメリットがあるこの案を表にまとめると以下の通りとなります。
この表のうち、メリット欄の最後の項目は今までにない切り口ではないかと考えています。
それが自動試験機能を導入することが「感染症予防対策」につながりうる、ということ。
おそらくですが今後、自動試験機能は一般的な機能として流通していくものと推測されます。
中小企業の当社(極小企業)でも新規ビルへの設置事例があるくらいですので、最近の建物では既に当たり前の機能となっている可能性もあります。
※その辺りは施工件数の多い企業やメーカーの方がお分かりかもしれません。
一方で、既存建物で自動火災報知設備を更新する際、自動試験機能を選ぶ例は多くありません。(当社調べ)
そこで、まだこの機能を携えていない建物のオーナー様へのご提案です。
まだ既存建物で一般化していない今のうちに新規導入することで、対外的に「感染症予防としてこんな対策をしています」というアピールの一つに使えるのではないでしょうか?
不動産管理会社やビルメンテナンス会社の皆様も、今後の改修案件の営業提案の売り文句の一つにいかがでしょうか?
そしてもしこれをご覧のメーカーの皆様、世の中の感染症予防対策の一助のため、どうか自動試験機能付きの機器の価格を何卒(それ以上は言えません)。
今後どの業界でも感染症対策が求められ、対策を講じていることが当たり前となる世の中になる以上、消防設備業としても出来ることを推進していくべきだと思います。
もしかしてこんな事している建物、ないですよね?
なお既に自動試験機能付きの設備を導入済みの建物であれば、室内点検不要の恩恵を受けていると思います。
しかし、もしかして「念のため」や「より正確に安全を確認するため」といった不合理な理由で室内点検を行っている物件はないでしょうか?
もし、もしそんな物件があるのであれば、これを機会に入居者による外観点検に切り替え、リスクヘッジを図ることをオススメします。
以下の写真例と同じ、または似た感知器が室内に設置されていたら、その建物には自動試験機能付の機器が導入されている可能性が高いと考えられます。(丸いマークが目印)
自動試験機能が付いているならば、どう考えても室内点検をするよりコロナウイルス感染リスクを避ける方が重要度が高いです。
心当たりがございましたら、建物のオーナーや管理会社へご相談してみてください。
もちろん当社へのご相談もどしどしお待ちしております。
その他
※1 メリットデメリット表の記載について
自動試験機能付の機器導入のメリットに「点検費用の減額要素となる」と控えめの記載をした理由は、こんな要素が考えられたからです。
・室内点検が無くなったからといって、現地に行くことには変わりない
・事前の日時調整、書類作成、消防署への書類提出などの対応がある
・室内感知器に不具合があれば、点検の範囲内で調査を求められる
※2 避難器具はどうした?
2020年4月19日時点で、避難器具の点検を人との接触を避けつつ行う術を見出せていません。
そのため、上記案だけでは避難器具のある住居は入室が必要となってしまいます。
もし良案が浮かべば第二弾のnoteを書こうと思っていますが、もしこれを見てこんな案あるぞ、という方がいらっしゃいましたらご教授いただけますと幸いです。
※3 もしかしてこんな事している建物、ないですよね?の理由
自動試験機能とは別に、「遠隔試験機能」という機能を持った設備もあります。
これは共用部から専用部内の感知器を試験することができる設備で、自動試験機能ほどではないですが室内に入る必要がないという点が共通しています。
こんな便利な設備が付いている物件で、管理会社の仕様により室内点検をするケースがあると聞いたことがあったので、これを機に本当は必要ない点検をしている事例もあることを周知できればと思い記載しました。
感染症対策、生産性向上のためにも、知らない方が知ってくれるといいなと思います。