いずれ春永に、酒杯の月を呑みほさん
古い友人が亡くなった。
学生の頃、舞台を作るためにいっしょに徹夜した。
深夜に自動販売機のうどんや、紅生姜てんこ盛りの牛丼を食べた。
いや、それを食べていたのは私で、彼は横でビールを飲んでいた気もする。
40年余り前の話。
骨まで数日煮込んだカレーをご馳走になった。汗をかきながらたべた。
マコーミックのひと瓶単位で、まるごとスパイスを入れたカレー。
今でもカレーを食べ歩いているのは、あれが原点だったのかもしれない。
共に過ごした日々は、けっして多くはなかったのだけど。
社会人になる前、モラトリアムな時間の中で、共に過ごした刹那。
自分のこと、仲間のこと、友人のことで、世界は「全て」だった。
今ごろ、先にいったえいきちゃんとビールを酌み交わしているだろうか。
いや、二人の手酌で淡々と飲む姿が好きだった。あっちでも手酌かな。
「共に在ること」が世界の「全て」だった大切な時間。
いずれ春永に、酒杯の月を呑みほさん。
2021年1月30日