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僕が見た世界、君が居る未来 #10【小説】
恵莉の心 Fin
お昼を食べ終え、教室に戻る。道中で、放課後学校案内するから会えないかと誘われ、先生の呼び出しの後なら大丈夫と答えた。
嘉島くんは、放課後残って勉強してるらしく、素直にすごいと思った。
戻る頃には教室を観に来る生徒もいなくなり、何事もなく自分の席に座る。
すると、恐る恐る2人のクラスメイトが話しかけて来た。
「ティターニアさん、」
1日が終わる頃には、もう数人のクラスメイトと、お話しできるまでになった。今思えばお昼の2人がきっかけだったと思う。
はあはあ、意外と時間が掛かってしまいました。嘉島くんはまだ教室に居るでしょうか。
教室の手前で小走りを止め、歩きながら息を整える。教室の前に着き扉を開ける。
教室を見回すと、ノートを枕にして寝ている嘉島くんしかいない。とりあえず静かに自分の席に行き荷物を置く。
「え〜と、どうしよう」
こうゆう時起こして良いのだろうか。
嘉島くんの寝顔を見つつ考える。そして思い出す、今朝、教室で読んでしまった嘉島くんの心。
『夢で観たあの人だ』
普通ならこんなセリフを聞いたら、運命の相手的な事と思う。しかし、彼女は違った。
「嘉島くんはあの時の事を夢だと思ってるんですね。」小さく呟く。
でも夢では無いんですよ、実際にあの時あの防波堤で、私は夜の海を眺めていたんです。もう直ぐここから、離れなければならない時、あの景色を目に焼き付けておきたくて。
私は寝顔にかかった髪の毛を直そうと、手を伸ばし同時に腰を上げる。
すると突然、嘉島は目を覚まし起き上がる。
「うあ、やべ、寝てた!」
嘉島くんが辺りを見回す。私は驚きのあまり変な体勢で固まっている。
「あのー、大丈夫?」
「あ、あ、あ、あの、す、すいません大丈夫です」
慌てて、自分の席に座り直す。
危なかったー、なんか色々。近づき過ぎるのも変な女だって、思われるから。ゆっくり進めたいのに、どうしても衝動がーーー。
内に秘めた感情を抑えつつ、落ち着く様に深呼吸をする。
「ティターニアさん、本当に大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です」
「なら、良いけど。飲み物買ってこようと思うんだけど、なんかリクエストある?」
「え、私ですか」嘉島は頷く。
「良いのであれば、お茶で」
「おけー、お茶な」
そう言って席を立ち、教室を出て行った。
いつから起きていたのか、確かに目は瞑っていたけど、あんな瞬時に切り替えられるのか。自分の心臓が鼓動を早くする。静かな教室が、鼓動の音をより鮮明に、自身の羞恥に追い打ちをかける。
しばらくの間、恥ずかしさで頭がいっぱいであったが、嘉島くんに飲み物を買わせてしまった事を思い出した。
突然のことで、頭が真っ白になってしまったとは言え、なんだか悪い気がして、嘉島くんを追いかける事にした。
教室を出たものの、もう嘉島くんの姿は無かった。そもそもこの学校に自動販売機があるのだろうか。あったとして、それが複数ならどこに行ったのか、予想もつかない。
いや一つあった、食堂だ。食べる所の近くに飲み物を置くのはあり得る。
そう思い至り、私はお昼に一緒に行った事を思い出して走り出した。
しばらくすると、向こうに一人の女生徒がいた。
「あら、ティターニアさん、どうしたの?」
「林道さん、え〜と、食堂ってこっちで合ってますか?」
「いいえ、逆だね」
「え!ほんとですか、ありがとうございます」
私は真逆に走っていたみたいだ。流石に疲れたので小走りで食堂を目指す。
廊下の角を曲がると階段下に自動販売機と嘉島くんが見え、声をかけようとした瞬間。
「ヒメだ!」
1人の女生徒が嘉島くんに声をかける。私は驚いてつい柱に隠れてしまい、2人の様子をみる。
「おう、三島」
会話はハッキリ聞こえないが、名前だけは分かった。三島さんだ。スポーツ系の部活なのだろう、運動する格好で髪を後ろで括っている。
やっぱり2人の距離感は近い気がする。仕方ないけど、、、2人を見ていると胸のざわめきが私を締めつける。
「じゃあね、恵莉ちゃん連れて来てよ」
「あいよ〜」
ヤバ!こっち来る。急いで戻らないと、別に悪い事してるわけではないけど、自然と逃げる事を選んでいた。
「すまん、待たせたな。これお茶ね、色々種類あって詳しく聞かなかったから、僕が好きなルイボスティーにしたんだけど、大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です」
「そりゃ良かった。」
『スコットランドってルイボスティー飲むのかな。』
「学校案内とか言ったけど、ざっくりぐるっと回るだけで、そもそもそんなに大きくないからこの学校、すぐ終わるよ」
私達は飲み物を持って教室を出た。
私は嘉島くんの心を聞いて思う。嘉島くんの好きなものを知りたいから。