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またいつか会える日まで、、、<1日目前編>

 研修当日、朝というには空が暗すぎる午前4時、前日に調べて集合時間に羽田に間に合うには、この時間の始発に乗るしか無かった。

 この日は正直寝たかどうかも怪しい位で、早々に朝食を済ませすぐに家を出て、真っ暗な中、少しの雪とともに最寄り駅へ向かった。

 駅に人はほとんどいない、しかし明かりは煌々とし時間感覚を狂わしてくる。

 電車が来た、この時間の電車に乗るのは、人生初めてであったので人なんているのかと思っていたが、これが案外乗っていた。

 普段乗る時間の客層とはかけ離れた、厚手の作業着のような洋服を纏った人が大半で、スーツもちらほら見える。

 最寄りからしばらく、乗っているとあっという間に、列車内が混み合ってくる。

 こんな朝早い時間に、こんなに出勤している人がいるのかと思うと、日本は信じられな程に、ブラックな企業が多いのかと錯覚させられる。

 家から羽田まで一度乗り換えが必要であった。駅内を少し歩きながら、私はスイッチを切り替える為に用意していた、黒マスクに、まるでスパイが逃走しながら変装する様な、滑らかな動作で付け替えた。

 私はいつも頭の中を、理論優先と感情優先の2つの比率を変えて、日々過ごしている。理論とは、合理的に行動する事を指し、感情とは、人との付き合い方、コミュニケーションの事を指す。

 普段は理論7感情3であるが、今回の研修は理論2感情8で行こうと前々から決めていた。そうでもしないと、5日間孤立してしまうと直感的に思ったからである。

 乗り換えてすこし、羽田に着いた。ここでも1つ問題があった。チケットを配る担当の先生が、どこにいるのか分からない。

 あらかじめ、服装や目印になる物を掲げるとか、してくれればすぐに発見出来るものだが、特にその指定が無く必死に、周りにいる人全員の顔を見て先生を見つけ出すしか無かった。

 ダメだった。

 疲れてそばにあった背もたれ無しのソファに座っていると、端の方でなんだか人が集まっている。試しにのぞいてみると、なんと同じしおりを持った先生がいるではないか。

 集まった中で近くに立っている人に聞いてみた。
「河那賀(かわなが)大学ですか」
「そうです」
 彼、香山湊(かやまみなと)はちょっとクールな感じかな、直感的におもった。

 でも良かった。どうにか北海道に行けそうだ。

 そのとき偶然に、同室になる予定だった嘉島輝(かしまあきら)にも会えた。当初、2人一部屋で研修だったが、コロナの事もあり、1人1部屋に変更になっていた。

 嘉島とは初対面と言って良いので、自己紹介や趣味を含めいろんな事を話しながら時間まで待ちつつ、先生が一緒に行こうと言うので座っていた。

 この研修は嘉島、含め全員が初対面になるので自己紹介がスタートになるのは必然であり、この先この連続なんだと思い、若干の緊張とそれを超えるワクワクも密かに感じていた。(この先、最終日前日の夕食会でも初めましての人と会話することになることは後の話)

 そんな時、1人学生が現れないという、保安検査所を通れる時間が迫る中、女生徒がやってきて最後のチケットを受け取った。

 これで乗れるとなり、保安検査所に向かった。そしてまたしても問題がふりかかる。

 手荷物を出すとき、十徳ナイフのような物は、機内に持ち込めない事は知っていたが、それに時間制限があったことを知らなかった。ちょっと粘ってどうにか出来ないものかと交渉したが、結果は放棄するほか無かった。

 時間が迫る中、急いで金属探知機を通った先で先生と2人が待っていてくれたが、時間も迫り私が通過したのを見て、先に行ってしまった。私も全速力で着替えて、財布や定期を落としながらも追いついた。

 追いついたものの、まだごちゃごちゃやっていたが、いい話題が出来たと思い自己紹介も含め先の女生徒、飯嶋沙希(いいじまさき)と話した。
「刃物持ち込みに時間制限があったなんて知らなかったよ、そういえばどうしてあんなに遅れたの?時間間違えたとか?」
「いいえ、実は大分早くに空港に着いてて、集合場所に居たんだけど、誰が河那賀大学の人か分からなくて、、、人だかりを見ても自信が無くて行けなかったんだ」

 まぁ、そういう人は私を含め、沢山居たんだろうと思う。みんな恐る恐る集まっていたという印象があったから。

 少し前方に先生が居たので、
「先生!やっぱ分かりずらかったですよ!あらかじめ特徴とか教えてくださらないと。」
 いじり気味につっこんでみた。

 先生の言い分では、赤い服を着てきたから良いと思ったらしい。私は心の中で、それを教えんかい!とつっこんでいた。

 いよいよ飛行機で旭川へ飛ぶことになった。なぜ「いよいよ」なんて表現なのかというと、記憶の中では初めて飛行機に乗るので、非常にそわそわしていたからであり、意気込んで、落ち着かない感じだったからである。


 次回は、1日目後編、いよいよスノー研修か、更なる出会いも、、、


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