「Nirvanaみたいな曲」の解釈があいつと違った
初めて作曲をしてみた高校2年生ぐらいの頃の話である。
当時、私は父から「これが最後の誕生日プレゼントだから」と言われ、なんとまぁ当時では珍しいiPadを買ってもらったのだ。
今でこそ「ガレージバンド(Apple純正の無料音楽制作ソフト)」をiPadでも使えることは承知だが、当時はiPadで何をできるのかもあまり理解しておらず、とりあえず「録音アプリ」を入れてそこにギター+鼻歌で作曲をしていた。作曲といっても、今聞くとほんと「なんだこれ」って笑いさえ起きないレベルの代物だったが。
曲なのかなんなのかよくわからないものを2〜3個作るうちに、私はふと「Nirvanaみたいな曲を作って、あいつに送ってみよう」と思い立った。
「あいつ」とは、当時よく音楽談義に花を咲かせ、ベースもやっていた旧友である。
当時の私は、とにかくいろいろな音楽を聴きまくり、その中でもNirvanaに夢中だった。
カートコベイン(この書き方はファン受けを狙っている)のカリスマ性、曲に漂う独特の陰鬱感、そして衝動感。
旧友のあいつもNirvanaを知っていたから、Nirvanaみたいな曲を作って送ってみたら良い反応をくれるんじゃないか__そう思い至ったわけだ。
かくして、私なりの「Nirvanaみたいな曲」を作って旧友に送ってみると。
いの一番、私は旧友からの返信にショックを受けた。
「なんだこれ。全然Nirvanaみたいじゃないぞ」
ものすごくショックを受けた。
確かに、今思うと曲のクオリティなんてうんこレベルな…というかうんこなわけだからそう言われても仕方がないは仕方がないのだが…。
とにかく、旧友からのその返信にショックを受けた私は、「Nirvanaのような曲」は作らないようにしていた。
時が経ち、久々にNirvanaを聴いていると、ふとそのことを思い出したのだった。
当時は、旧友の考えや価値観などをよく深掘りもせずに「こんな曲はダメだったか」と思っていたが、今改めて考えてみると、そもそも
「Nirvanaみたいな」
という漠然とした形容に解釈の違いがあったのだと推察する。
おそらく、旧友の言う「Nirvanaみたいな」は、Nirvanaの中で最も有名といっても過言ではない「Smells like teen spilit」のような、荒々しく叫ぶかの如く歌う曲を想定していたように思う。
あと、私も好きなのだが「Lithium」についても言及していたことがあったため、やはり「グランジ=Nirvana」という解釈(価値観)だったはずだ。
普通に考えると旧友の解釈で間違いはないように思うし、特に私もそれについて異論を唱えるつもりはない。
しかし、私の中での「Nirvanaみたいな」は、もっと陰鬱とした…沼の底のような不安定さを意識していた。
曲で言うと「Something in the way」のような、重々しく苦しくなる雰囲気を、である。
もっと突き詰めると、私は「Nirvanaみたいな」というより「カートコベインのような」曲を作りたかったのかもしれない。…そういう重苦しい曲を作ってた気がする。
バンド単位で解釈をするか、フロントマンの心情で解釈をするか…。
「私とあいつにはその違いがあったんだなぁ」と、今になって悟った次第である。
ちなみに、Nirvanaで好きな曲は…うーむ、「sliver」と答えておこう。
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