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余白がこれからの日本を救うのではないか?

先日、日本経済新聞の日曜版に
「建築で未来を創る哲学者」として
山本理顕さんの記事が紹介されていました。
山本さんの代表作は「横須賀美術館」や
複合商業施設「ザ・サークル・チューリヒ国際空港」など。
2024年5月に建築のノーベル賞ともいわれる
プリツカー賞を受賞した今話題の建築家さんです。
山本さんはプライバシーを偏重する戦後日本の住宅供給に異を唱え、
相互扶助に根ざす「地域社会圏」でコミュニティー再生を目指していらっしゃいます。

 「閾」という空間の存在
建築史研究会で先輩の黒沢隆さんが唱えた「個室群住居論」と出合う。未来の住宅は個室の集合になるという、ワンルームマンションを予測したような論考。「『空間を変えると家族も変わる』という発想が衝撃的だった」と振り返る。両親と子ども2人の標準家庭を想定して50年代以降に定着した2DK住宅の大量供給によって、家族の形が変化したのを実感していた。卒業後に進んだ東京芸術大学大学院で「閾(しきい)」という空間の存在を学ぶ。

家の外と中をつなぐ中間的な空間として玄関や式台のような閾があった戦前の住宅と違って、2DK住宅は閾がない。「プライバシーとセキュリティーばかり重視する『1住宅=1家族』は建築家側の大失敗。住人の意識は内に向き、コミュニティーを拒絶するようになった」と語る。

(中略)

閉鎖的な集合住宅に対する挑戦、30年余で評価一変
建築家として、山本さんを一躍有名にしたのが91年に完成した熊本県営保田窪第一団地(熊本市)だ。2つの棟に分かれたリビングルームと寝室を渡り廊下で結ぶ風変わりな構造。リビングは中庭に面してガラス張りで、中庭をはさんだ住棟とはお互いの様子がわかる。中庭へは誰かの住戸を通らないと外部の人が入れない。「建築の側から地域社会的共同体を強引につくろうとした」。「1住宅=1家族」の閉鎖的な集合住宅に挑戦する試みだった。

しかし住民からは「使いにくい」「プライバシーが守れない」と苦情が続出した。「テレビのワイドショーで『今週の困ったさん』的に取り上げられるなどボコボコにたたかれた」と振り返る。30年余りが経過した今では「近隣の気配がわかり独居老人でも安心できる」と言われるようになっている。

建築で「意識や社会は変わる」
「建築が変われば住人の意識や社会は変化する」と、建築の力を信じてきた。「公共施設は管理しやすいよう外部と区画して隠すのが普通だったが、徹底的にオープンにした」。ガラス張りで訓練の様子が見られる広島市西消防署しかり、教室をガラス張りにした横浜市立子安小学校しかり。「密室のような教室では教師から生徒への一方通行の教育になる」。「建築を造ることは未来を創ること」が信念だ。

理不尽な設計コンペや制度、施主の要求には衝突を辞さない姿勢から「闘う建築家」と呼ばれる。町長の交代などでコンペの結果が覆された群馬県邑楽(おうら)町の役場庁舎のケースなどでは自治体を相手に提訴した。「巨費がかかる公共建築で地域社会に貢献しないものを造るのは、建築家としておかしい」 日本経済新聞 NIKKEI The STYLE 「My Story」24年9月15日「建築で未来を語る哲学者」より

日本経済新聞建築家の山本理顕さん 「建築の力」で未来を創る哲学者
NIKKEI The STYLE 「My Story」
2024年9月15日

この文章を読んだとき、以前読んだ
山﨑晴太郎さんの「余白思考」を思い出した。

 リアルなイメージで考えるなら、昔は多くの家にあった「縁側」「土間」のようなもの。いわゆるうちと外の概念が曖昧になる、中間領域と呼ばれる部分です。
誰かの部屋でもないし、台所やお風呂のように決まった使用目的を持つ場所でもない。子どもが遊んでいることもあれば、ねこが昼寝をしていることもある。近所のおじいちゃんが遊びにきて将棋を指していたり、家族でスイカを食べたり、座布団を敷いて昼寝をしたり。内と外の概念も溶け「何をしてもいい」ユニバーサルスペース。こういう場所が上手につくられている家は風通しもよくて、自由度が高い。楽しいことが入り込む余地がたくさんあります。

「余白思考」P32

自由度は、確かに余白や安心安全からしか出てこないよな。
セキュリティやプライバシーとは真逆の、
オープンスペースでそして誰もが自由に過ごせる空間と時間。
そんな余白スペースと時間が、今私も喉から手が出るほど欲しい。

しかしながら、毎日ニュースで報道される
闇バイトによる老人を狙った自宅強盗事件。
これを聞くと、さらにセキュリティを強化したほうが良いと
両親に「鍵を閉めてね」「窓の鍵も閉めてね」
どんどん余白がないようなことを推進してしまっている自分がいる。

これからの日本を救うのは、実は余白なんじゃないだろうか。


ヘッダーのお写真はholoshirtsさんの写真をお借りしました。
ありがとうございました。


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