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公園の一角からアイデア発信

家族連れの行楽や運動などを楽しむ市民でにぎわう愛知・岡崎市東公園の一角に、世尊寺はある。昭和の初めに高名な地理学者の発案から岡崎市がかかわって建立された、どの宗派にも属さない「単立」のお寺だ。ユニークな成り立ちや、お寺を維持するためのアイデアなど、副住職の内藤隆之さん(49)にお話をうかがった。


学者発案で政財界が建立支援

――世尊寺は公園の一角にあるんですよね。

「はい、東名高速の岡崎インター近くにある東公園の中にあります。東公園は面積がナゴヤドーム約5個分という広さで、園内には動物園や恐竜の大きなモニュメントもある、岡崎市立の公園です」

公園から入る世尊寺の入り口

――公園内のお寺とは珍しいですね。

「明治、大正時代から昭和の初めにかけて活躍された有名な地理学者で、志賀重昂さんという方がいます。日本に登山を普及させて、この辺りでは木曽川の『日本ライン』を命名した方ですが、岡崎市の出身なんです。地理学者ですから世界のあちこちに学術旅行をされていて、各地から持ち帰ったコレクションを、故郷への感謝の意を表すため、岡崎市に寄付することになり、それをおさめる釈迦堂を建てる計画が立てられました。

当時の市長や地元財界の支援があって、広大な宗教公園をつくる計画だったようです。釈迦堂が完成する前の昭和2年に志賀重昂さんが病気で亡くなられましたが、その遺志は岡崎市によって受け継がれ、昭和4年に仮堂が完成しました。それが今の世尊寺です。

宗教公園となる予定だった場所は、岡崎市によって東公園として整備されたため、世尊寺が公園の一角にある形となりました。

最初は、市長がお寺の管理者で、岡崎市仏教会の会長が住職を兼務していましたが、途中から志賀家の菩提寺とのつながりから、私たち内藤家がお寺を守っています」

世尊寺の本堂(左)と公園内の説明板(右)

特定の宗旨・宗派に属さない「単立」

――宗派はどうなるんですか?

「特定の宗旨、宗派のグループに所属していない、単立の寺院です。岡崎市仏教会の会長が住職を兼務していたころは会長の属している宗派のお経が読まれていました。内藤家は、日蓮宗のお寺の住職が親戚にいる関係で、日蓮宗の作法でやっています。私は名古屋市のサラリーマン家庭の出身で、私自身も会社で営業をしている普通のサラリーマンなんですが、結婚して養子に入ったことで、日蓮宗の修行を経て副住職となって、お休みの日などにお寺の職務を行っています」

副住職の内藤隆之さん

――少し変わった成り立ちなんですね。

「檀家さんがいません。お墓もこれまでは身内のものしかありません。今回、岡崎東公園はなえみ墓園がオープンすることで、多くの方がお寺に足を運ぶきっかけになってほしいと期待しています。お墓がないのでお参りに来る方もおらず、なかなかお寺に足を運んでいただくことが難しいんです。過去に世尊寺はいろんな企画をしていて、『一日尼僧体験』というのが大ヒットして、雑誌やテレビの取材を受けて全国的な話題になったようです」

「一日尼僧体験」や「五感塾」考案

――一日尼僧体験とはどんなものだったのですか。

「厄除けの行事は全国にいろいろありますが、女性向けのものは少ないので、考案したそうです。足を清めた後に、剃髪の代わりに髪を2センチほど年齢と同じ本数だけ切り落として、出家とし、純白の烏帽子と紫の法衣という尼僧の姿でお経を読み、厄落としの祈祷をして、最後にお粥をいただくという、2時間ほどのコースです。終わった後には境内で記念撮影をしてもらい、多い日には一日に6コースも受け入れて、かなりにぎやかだったようです。多くの芸能人の方もいらしたそうです。運営の人手不足もあって10数年ほど前にやめましたが、今も時々、体験者から『娘や孫にやらせたい』と電話で問い合わせがあるそうで、またやってはどうかと言われています」

「一日尼僧体験」を伝える当時の雑誌

――尼僧体験が復活したら、また注目されるかもしれませんね。

「尼僧体験のほかにも、観光バスのランチ休憩の場所として一度に200人くらいの昼食を提供したり、他のお寺と連係して十二支巡りをやったりして、お寺を維持してきたそうです。私の妻は、世尊寺の3姉妹の次女なんですが、3姉妹で人間の五感を刺激する『五感塾』というイベントをやっていたこともありますが、コロナ禍もあって今はなにもできていません」

遊びに来たついでにお寺へどうぞ

――なにか今後のアイデアはありますか?

「自分は中京高校(岐阜)、名城大学で野球をやっていたので、野球やスポーツにかかわる祈願ができないかと考えたりしています。夏の高校野球愛知大会の決勝が毎年、岡崎中央総合公園の市民球場で開かれていますが、世尊寺は球場へ向かう道路の入り口にあります。使わなくなった野球道具のご供養や、ひじや肩などのけが防止とかはどうでしょうか」

学生時代は野球に打ち込んだ副住職

――どんなお寺にしていきたいですか。

「いろいろ思いを巡らせているなか、はなえみ墓園のことを知り、これからは永代供養の付いたお墓は必要でしょうし、花や緑に囲まれた 墓園ならお寺に来ていただくきっかけにもなるのではないかと思い、矢田石材店さんとのご縁となりました。東公園は動物園の人気者、アジアゾウのふじ子ちゃんに会えたり、巨大な恐竜モニュメントなどもあって、無料で手軽に楽しめる場所です。ご家族で遊びに来たついでに、みんなではなえみ墓園にお参りに行こうかと、世尊寺に足を運んでいただけるような光景を、楽しみにしています」

動物園のゾウのふじ子(左)とミーアキャット(中央)、恐竜モニュメント(右)

寺名:東天竺山 世尊寺
宗派:単立
住所:愛知県岡崎市欠町天上田11


永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
毎月の第2、第4月曜日に更新する予定です。

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