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<第3章:その3>基本的なマナーは厳守する

「お墓参りの作法を知りません。どうすればいいのでしょう?」
と不安に思われる方もいるでしょう。そんな心配もご無用です。
基本的な作法や、私のお墓参りについての経験談をこの章ではさまざまな角度から紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。きっと役に立つでしょう。
いきなり、お墓参りはハードルが高いという方もいるかもしれません。そうした方は、まずは墓地を気軽に訪れることをおすすめします。
まちの雑踏を抜けて、霊園や墓地に一歩でも足を踏みだせば、そこは癒しの非日常空間。その場所自体がある種の力を持ったパワースポットです。何気なく散歩をするだけで、精神のリフレッシュ効果も得られるでしょう。
お墓参りには、「こうしなければいけない」というような、特別な作法や決まり事はありませんが、基本的なマナーについては覚えておいた方がよいでしょう。
墓地には、公共墓地(市や町などの自治体が管理)、寺院墓地(お寺が管理。俗に民営といわれる墓地もありますが、宗教法人の名目になるので広く寺院墓地としました)、地域墓地(周辺住民が管理)の3つの種類があります。
お墓を建てるためには、墓地の種類にかかわらず、「永代使用権」を購入する必要があります。「永代使用権」とは、その名前の通り、その敷地を永代にわたって使用できる権利のことです。
ただし、注意が必要です。「永代使用権」を手にするには、「永代使用料」を払わなければいけませんが、あくまでも、その「永代使用料」というのは土地の購入価格ではなく、単に使用権の権利を取得するための価格です。
ですから、「この土地は私のもの。何をしようが、私の勝手」というわけにはいかないのです。
とくに気を付けたいのが、寺院墓地です。土地自体はお寺のものであり、使用する側はその一部を貸していただいているという認識を持っていなければなりません。当然のことながら、管理しているお寺と良好な関係を取り結ぶことができなければ、気持ちよくお参りすることもできないでしょう。
お墓参りに訪れたら、まずはお寺の本堂に出向いて、住職や関係者にご挨拶して、お賽銭を入れる。そして、日ごろの管理に対する感謝の気持ちを示す。本堂にも手を合わせる。また、頻繁にお墓参りをされる方なら必要ありませんが、年に1、2回ぐらいという頻度で訪れる方の場合は、多少のお布施は礼儀です。
お彼岸の時期には、「彼岸会法要」を行っていることが多いので、余裕があれば参加してみることもおすすめします。お寺の境内で行われる読経や法話など、誰もが気軽に参加することができます。
ほかに、気を付けたいのが、近隣のお墓に対するマナーです。特に、注意を要するのが、お墓そうじの後始末。おそうじ自体は先祖のためになるとはいえ、隣接する他家のお墓に迷惑を掛けてはいけません。水を大量に掛けて、周囲にしぶきをまきちらすようなことはもってのほか。もし、しぶきが飛んだ場合には、しっかりとふき取るのは当然の礼儀です。
 時折、お墓に人の足形が付いている場合があります。ご遺族が見たら、これほど気分の悪いことはありません。そうじをする際に、たまたま隣の墓の角に足が乗ってしまうこともあるかもしれません(もちろんこれ自体いけないことですが、あくまでも不可抗力として)が、その場合にも、きれいにふき取るのは当たり前。そうじが終わったら、念には念を入れて、周囲のお墓に迷惑が掛かっていないかチェックするなど、万全の配慮を尽くさなければいけません。
墓地は大切な亡き人や先祖を供養する神聖な場所。基本的な心構えとして、そうした場所をみんなで使わせていただいているという「コミュニティ意識」を十分に持たなければいけません。


前回まで
はじめに
・序章
 母が伝えたかったこと
 母との別れ
 崩れていく家
 止むことのない弟への暴力
 「お母さんに会いたい!」
 自衛隊に入ろう
 父の店が倒産
 無償ではじめたお墓そうじ
 お墓は愛する故人そのもの
・第1章
 墓碑は命の有限を教えてくれる
 死ぬな、生きて帰ってこい
 どこでも戦える自分になれる
 お墓の前で心を浄化する
 祖父との対話で立ち直る
 お墓はいちばんのパワースポット
・第2章
 心の闇が埋まる
 妻から離婚届を突き付けられて
 妻の実家のお墓そうじをする
 ひきこもりの30歳男を預かって
 心からの「ありがとう」の力
 先祖と自分をつなぐ場所
 お墓を建てることは遺族の使命(前編)
 お墓を建てることは遺族の使命(後編)
 お墓のシミが教えてくれたこと
 壊されるお墓
 「もう一度妻に会いたいんです」(上)
 「もう一度妻に会いたいんです」(中)
 「もう一度妻に会いたいんです」(下)
・第3章
 お墓参りはあなたの心を浄化する
 お墓参りの効用

矢田 敏起(やた・としき) 愛知県岡崎市生まれ。高校卒業後、自衛隊に入隊する。配属された特殊部隊第一空挺団で教育課程を首席で卒業後、お墓職人となるため、地元有力石材店で修業をする。1956年に創業された家業の石材店を継ぎ、「人生におけるすべての問題は、お墓で解決できる」ことを見出し、「お墓で人間教育」を提唱する。名古屋の放送局CBCラジオで、平日午前の番組『つボイノリオの聞けば聞くほど』に2012年から出演を続けており、毎週火曜日に「お墓にかようび」というコーナーを持ち、お墓づくりや供養に関する話を発信している。建て売りで永代供養の付く不安の少ないお墓を提供する「はなえみ墓園」を2020年に始め、愛知県内30カ所(2024年末現在)となっている。2022年にお寺の本堂を使った葬儀をサポートする「お寺でおみおくり」を始め、2023年にはお墓じまいなどで役目を終えた墓石の適正な処分や再利用を進める「愛知県石材リサイクルセンター」を稼働させた。

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