【座敷わらし日記#1】愛しの座敷わらし
『愛しの座敷わらし』は、荻原 浩さんの小説のタイトルです。
私は、この本を読んで「座敷わらし」のイメージが、ガラッと変わりました。
1.小説「愛しの座敷わらし」
『愛しの座敷わらし』は、荻原 浩(おぎわら ひろし)さんの小説で、直木賞の候補作品になりました。水谷豊さん主演で、2012年に映画化もされています。
父親の転勤で東京から岩手の古民家に引っ越した一家と、その古民家に宿る「座敷わらし」との交流をコミカルに描いています。
私はこの本を読み終えたとき、荻原 浩さんは、たぶん最後の一文を書きたかったのだろうな、あるいは最後の一文を思いついて、物語を作り上げたのかもしれないと、一人でニヤニヤしながら思いを巡らせたことを憶えています。
「座敷わらし」については、東北地方の旅館などにいると、テレビ番組で見た程度で、正直なところ、あまり興味はありませんでした。
この物語では、古民家に宿る「座敷わらし」が、引っ越してきた一家と積極的に交流して、ときには家族と一緒にお出かけすることもあり、こんな風に「座敷わらし」と交流できたら楽しいだろうなあと思っていました。
「座敷わらし」を題材にしたものとしては、柳田國男の『遠野物語』が有名です。宮沢賢治も「ざしき童子のはなし(ざしきぼっこのはなし)」という童話作品を発表しています。
2.精霊? それとも妖怪?
「座敷わらし」がいる家は裕福になり、繫栄するというのが一般的にいわれることですが、そもそも「座敷わらし」って、どんな存在なのでしょうか?
インターネットの情報では、岩手県の妖怪で、5、6歳くらいの小童、髪はおかっぱ、またはざんぎり頭、男の子は黒っぽい着物、女の子は赤いちゃんちゃんこや小袖、ということです。
いたずら好きで、音を立てて遊ぶことがあり、子どもには見えるが、大人には見えないとか、大人が子どもの人数を数えると、本来の人数よりも一人多く、「座敷わらし」の分も数えてしまうという話もあります。
二戸市(にのへし)には、かつて亡くなったり、口減らしのために間引かれた子どもの供養のために、部屋の一画に子ども部屋を作って、お菓子やおもちゃを置いて祀ったという風習が、現在でも残っています。
祀られた子どもが「座敷わらし」となり、次に生まれてくる子どもが、無事に成長して幸せになるように、その家が裕福になり繁栄していく、と考えれば納得できる話かもしれません。
3.京都の神社に、なぜ「座敷わらし」?
東北の岩手を中心に伝承が多くある「座敷わらし」が、なぜ京都の神社にいるのでしょうか?
京都の若一(にゃくいち)神社ついては【座敷わらし日記#0】に、その由緒などを詳しく書いています。
若一神社の「座敷わらし」は、神社の拝殿や本殿、社務所ではなく、清盛公御手植えの楠木に宿っているといわれます。
なぜ、京都の神社のご神木である楠木に「座敷わらし」が宿っているのか、その正確な理由は分かりません。
現在の若一神社の地には、清盛公の別邸、西八条殿がありました。清盛公は熊野権現のお告げで、若一王子の御神体を祀ったことで、出世したといわれています。
「座敷わらし」はこの頃には、すでに宿っていたのか、それとも現在に至るまでに宿るようになったのか、これも分かりません。
京都といえば、かつての都であり、華やかな印象がありますが、何度も戦火に見舞われた歴史があります。その歴史の中で、亡くなってしまった子どもたちが「座敷わらし」として宿るようになったのかもしれません。
4.現在の「座敷わらし」の様子
2023年 3月21日、春分の日に、初めて若一神社に参拝しました。宮司さんのご厚意で、神社の由緒や歴史、清盛公について、お話を聞かせていただきました。
「座敷わらし」については、神社として大々的に宣伝しているわけではなく、知る人ぞ知る情報として広まったようです。
そのため、宮司さんとしても参拝者向けに話せるエピソードは、あまりないようでした。テレビ番組の取材で、夜中に不思議なことは起こったようですが、普段、夜は無人になるため、神職の方は体験していないようです。
5.清盛公御手植えの楠木で感じたこと
宮司さんのお話を聞かせていただいた後、雨が降る中、平清盛御手植えの楠木と精霊を祀る「楠木社」に参拝しました。
ご神木の楠木周辺は、確かにパワースポットでした。
すぐ横は西大路通で、車がビュンビュン走っていますが、心地良いエネルギーに包み込まれます。
しかし、「座敷わらし」のエネルギーや『ここにいる』という感覚は、残念ながら感じることができませんでした。
よく分からなかったなあ、と残念な気持ちのまま駅に向かって、赤信号で立ち止まったとき、右足に寄り添うように、熱い何かがあることに気づきました。
この感覚は『座敷わらし』に違いないと確信しました。
参拝の様子や、帰り道の話は、次回以降に詳しくレポートします!