【エッセイ】夕暮れのマーライオン
(Stories At Twenty Vol. 1)
コロナ明けまもない頃、コース料理をご予約頂いた紳士淑女の老夫婦が薄らと額に汗をかきながらお店に入って来た。
「あら素敵なお店じゃない。いいとこでよかった。」と英語で話す初めて見るお二人に、僕はおしぼりとお水を出しながら声をかけた。
「どこからいらっしゃったのですか?」
「私たち香港から来たんです」「そして今、夕暮れのマーライオンを見て、ボートキーをゆっくり歩いて来たんです」
と僕が注いだグラスの水を飲み、おしぼり