パーンチ!とか可愛いこと言ってられん-鉄鋼業界シリーズ④
数か月前に日本の高炉系鉄鋼企業の行方、のような内容でいくつかNoteを投稿させてもらいましたが、またここ数日で似たようなニュースもあったので、続編として投稿しようと思います。過去投稿は下記リンクにて。
-鉄鋼業界シリーズ(業界背景、①、②、振り返り投稿)
日本の高炉系鉄鋼企業は、高品質・高機能な鋼板などをトヨタを含めた日系自動車産業に提供しており、それが同社の競争力となり、同社の下流部門が顧客の生産拡大と共に海外へ事業を拡大する、という流れになっています。(もちろん各自動車会社によって現地調達の比率を高くし、コストを抑える、など推進していますが、大きな流れとして日系鉄鋼企業も日系顧客の海外進出の恩恵を受けていた、というのはあり。)
そこにですが、世界一の自動車市場である中国で、トヨタが中国政府が強く導入を推進しているEV(電気自動車)にて、中国最大手の高炉型鉄鋼である、宝武鉄鋼が高品質であるため、今後商材を提供する、というニュースがありました。また象徴的な一文が上記記事にありました。
『今後は中国勢にシェアを奪われる可能性がある。日本勢が今後も投資を継続できる体力を維持できるかも不透明だ。』
以前も半導体関連の投稿でもお話したように、中国国策による産業の高度化の流れは、この革新が大きくは生まれにくい鉄鋼業界でも同様に推進されており、日本の高炉型鉄鋼企業は国内での需要減、海外市場での日系顧客からのシェア減少となると、今後の持続的な収益力に更なる下方圧力がかかっていくように感じます。
更にこの度のコロナ禍での国内外の経済低迷が長引き、米中摩擦はもっと過激化するも、世界一の市場である中国での過剰生産設備は維持(しかもコロナ禍で増産まで転換)され、と見られている中で、上記記事も日本の鉄鋼トップからのコメントが的確であるが、図体が大きいだけに何とも動きにくい、という同社経営の難しさを象徴しているように感じた。
『構造改革を遂行し、生産量が増えなくても収益を確保できる体質をつくるしかない。単純に能力を減らして量を絞るだけでは解決策にならない。利益が出ない設備については更新投資を減らせるように集約し、投資の選択と集中を進める。』
国家全体として、主に製造業でご飯を食べていくモデルはもう終わっている、なんて話をする方が以前にも多くいるものの、日本での高コスト・高技術化・人口減など様々な逆風の中、国内での企業・施設再編などを通じて耐え忍んできた鉄鋼業界。しかしグローバルの過剰設備状態や人口動態、業界変動に伴い、石油業界(日本は下流施設だけですし。。)も含めて、特に高炉型鉄鋼企業はかなり大きな問題が突き付けられているような気がします。