金余りの後遺症か?
コロナ禍で先進国を中心にワクチン接種が進む中、経済活動の回復を背景とする、昨今の高インフレの兆候を受け、米国FRB(中央銀行)の大規模な金融緩和政策に関する変更があるかどうか市場で注目された。
(注:下記過去投稿にて、米金融緩和政策による他国の金融政策にも大きく影響を及ぼしている、と書かせて頂きました)
米金融当局者は過去数カ月間、物価上昇は一過性のものだと説明してきた。しかし、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合が終わってみると、当局者はそれほど確信を持てなくなっていることが浮き彫りとなった。最新の金利予測分布図(ドット・プロット)は、当局者が2023年末までに2回の利上げを見込んでいることを示唆し、金融市場は不意を突かれたが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はその後の記者会見で、「われわれの想定よりインフレ率が高くなるリスクはあるだろうか」とした上で、それは「イエスだ」と語った。…そしてFOMC参加者も最新の四半期経済予測で実際に今後3年間のインフレ率の見通しを上方修正した。21-23年の予想はいずれも2%の当局目標を上回っている。
ここまでは予想可能な範囲であったと言えるだろう。これ以降の市場動向が今回の『金余りの後遺症?』ではないか、という点である。1つ目は米国債券市場であり、6月16日前と比べて米長期金利は低下(資産価格上昇)をしている。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表された16日。米10年債利回りは発表前後に1.49%台から1.59%台へ上昇した。…ところが17~18日には10年債利回りは特段の材料もないまま1.43%台へスルスルと下がった。米国債は主要国では金利が突出して高い。…世界最大の経済大国であり、圧倒的な流動性を誇る米国債に1.4%程度の金利がつくならば魅力的に映るのは不自然ではない。
そして2つ目は昨年から上昇が続いていた株式市場や商品市場が数日間下落をしている。(以前言われていた、債券金利が下がると株価等は上がりやすい?みたいなシーソ的な関係ではなくなっている、ということでもあるかと)
アメリカの証券・金融市場の様相は、先週の17日から一気に変貌した。…株式市場では、景気敏感株に売りがかさみ、このためNYダウは連日下落し続けている。一段と目を引くのは、国際商品市況の下落だ。…そうした市場の反応は的確なものなのだろうか。…たったの1日で、アメリカの経済は好況から不況に転落したのだろうか。そんなはずはあるまい。とすれば、こうしたさまざまな市場の動きをどう解釈すればよいのか。それは「市場心理の不安定さから、さまざまな材料や思惑に投資家が飛びつき、ドタバタと方向感もなく売買しているだけだ」と考えるべきだろう。
2000年以降の長引く金融緩和政策が続く中で、一時期同政策の方向転換があっても、債券金利が長引く上昇とはならず一方で株価は上昇し続けたように、今回も方向転換による所謂市場のボラティリティ(変動率)の高まりがみられ、流動性が高くリスク(株など)も高いものから売られていき、主要国債券は依然として人気が高くなる。今後もこの後遺症と向き合っていく必要があるのだろう。