非常識は常に常識になりえる
EVで有名なテスラがコロナ禍に、トヨタの時価総額を抜いたのはご存知な方も多いかと思いますが、そのテスラは時価総額をドンドン上昇させ、今やトヨタの時価総額の4倍だそうです。
多くの自動車メーカーとは一線を画し、プロセッサーやセンサーなどの比較的ハイエンドの半導体を求めるテスラは、半導体業界にとっても優先すべき顧客となったのです。サプライチェーンのボトルネックを解消する方法はいくつかあります。…一定量を自社で内製したり、使用する半導体の量を工夫して削減したりするものです。テスラが採ったのはこちらの方法です。テスラは一般的な乗用車に比べて数倍の半導体を使っていますが、何も工夫しなければこれが大きなボトルネックになってしまいます。ただ、うまく対処すれば、半導体不足下においてはライバルに差をつけられます。テスラは半導体の一部を内製するとともに、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が自ら半導体メーカーに対して直接交渉に乗り出しました。ソフトとの絶妙な組み合わせで、必要な半導体の数やバリエーションも減らしました。社内のIT人材が豊富なテスラならではの解決策と言えるでしょう。…すでにテスラの時価総額はトヨタ自動車の4倍弱に達します。
もちろん半導体の調達や内製化のみならず、テスラ創業者のイーロンマスクCEOの先見性や車のデザイン、加えてESG潮流に乗ったハーツ?との契約も、現在の時価総額というテスラの市場からの期待値に含まれているでしょう。
その半導体調達等がボトルネックとなり生産量減を余儀なくされる日本メーカー。今までは在庫をできるだけ持たない、ジャストインタイム(JIT)方式が常識とされ、ジャストインケース(JIC)方式は非効率、非常識とされてきました。
自動車産業のみならず、日本の基幹産業の一つでもあるFA(ファクトリーオートメーション)でも資材供給がボトルネックとなっており、JIC方式を取っておけば、という状態になっているようです。まさに非常識が常識になり得た瞬間でしょう。
世界同時多発のモノ不足があと半年は続くと判断し、ファナックは2022年3月期通期の連結業績予想を下方修正した。設計変更や代替部品の調達などで生産が途切れないように力を尽くすが、旺盛な中国需要に応えられないでいる。「早く届けてほしい。もっと生産ペースを上げられないのか」。…だが、そうした要望に応えたくても応えられない。「実需は堅調なので、本来ならもっと製品を供給しなければならない」。…半導体需要の急速な高まりや新型コロナウイルス感染拡大による東南アジアの製造業の減産、世界的な物流網停滞など、様々な要素が重なり調達網が混乱している。ファナックの調達網も例外ではない。山口CEOは「半導体や電子部品、鉄、銅線、樹脂など、あらゆる部品や素材が入手難に陥り、ロボットやFAの納期が延びてしまっている」と話す。
ポストコロナ時代が少しずつ見えてきたなかで、コロナ前の常識に戻るのか否か、コロナ前の非常識がコロナ後の常識となるのか、更なる見極めと俊敏な行動が必要となりそうです。