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金融がうまくいかない訳を垣間見る

11月30日に、2020年10月1日の東証の終日取引停止の責任を取って、宮原社長が辞任となりました。まず時系列で何が起こったかをおさらいしようと思います。

10月1日、メモリー故障による、東証の終日取引停止
10月2日、金融庁が東証と親会社の日本取引所グループ(JPX)に対し、金融商品取引法に基づく報告徴求命令を発令
10月16日、東証とJPXは、金融庁に原因や再発防止策などを盛り込んだ報告書を提出
10月23日、金融庁はに立ち入り検査を実施
11月30日、独立調査委員会の報告書提出。金融庁も同日、JPXと東証に業務改善命令を発令

では東証取引停止の問題点はどこだったのか。記事によると東証のarrowhead(アローヘッド)というシステムを開発している富士通が作成したNAS(ネットワーク接続ハードディスク)のマニュアルに不備があったようで、同日朝に異常が見つかった後、すぐバックアップに転換できなかった、とのこと。これ自体は、起こらないことがベストですが、システムとしてはそれなりに起こり得そうな。。

しかし個人的に注目したのは、政府や金融庁も処分理由とした、『終日停止にさせた責任・その後の対応』についてです。上記記事によると、下記のようなことがあったようです。

東証と富士通は何度もNASの切り替えを試みたがうまくいかず、午前8時36分に全銘柄の売買停止を決めた。通常は社内の売買監理画面から売買停止の操作をするが、NASの機能不全で使えなかったため、アローヘッドと取引参加者をつなぐネットワークの接続を午前8時54分に遮断した。
約30分後の午前9時26分、両社は手動でNASの切り替えに成功。売買再開に向けて、アローヘッドの再起動を検討し始めたが、ここで大きな壁にぶつかった。証券会社などにヒアリングしたところ、対応できる証券会社が限られたのだ。
「(アローヘッドを再起動すれば)証券会社は通常と全く異なる管理をしなければならず、その対応に相当の混乱が生じることが予想できた」。そのため、東証は午前11時45分に終日売買停止という苦渋の決断を下した。

そして11月30日に出された、金融庁によるJPXと東証への業務改善命令で、「投資者等の信頼を著しく損なった」という終日取引停止が重視された模様。独立調査委員会の報告書でも、証券会社と再起動を前提に訓練してこなかったと指摘された模様。指摘点自体はしょうがない、というか、それなりに的を得ている、ともいえる気がする。

一方で上記記事によると、政府による東証の人事に関する『実質的な意見』があったことと、なんだか現場を把握していない、という点だろう。

システム障害が起こった当日、東証―金融庁から首相官邸への連絡は遅れに遅れた。「取引を終日停止する」との判断は加藤勝信官房長官の記者会見中に伝わった。この時から官邸内では「障害が起こったことは仕方ないが、その後の対応がまずすぎる」との不満が出ていた。...当初、関係者が持ってきた軽微な処分案を官邸は突き返した。障害発生から、かなりの時間もたっていた。システム障害というミスそのものを責めているのではなく、その後の対応とマネジメントへの疑問である。

10月1日に東証のシステムが例え再起動しても証券会社自体も対応できない、と言われた中で取られた東証が取った終日取引停止、という判断。それ自体が本当に『その後の対応とマネジメント』が悪い、といえるのだろうか。問題発生後に、誰かトップが責任取らないと収斂しない、といった日本の悪い慣例に則ったような宮原社長の辞任劇であり、これらの人事に影響力を出すような官邸もいると考えると、金融業界の発展が遅いのも何だか理解できる気がする。





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