「本を囲んだ語り部屋」2025/1/19前野隆司さん『実践 ポジティブ心理学』
日曜朝のX(Twitter)スペース「本を囲んだ語り部屋」
1/19は前野隆司さんの『実践 ポジティブ心理学』を取り上げました!
著者はウェルビーイング研究で有名な前野さんです。もともとはロボットや脳科学の研究者でしたが、幸せのメカニズムを解明したいという思いからポジティブ心理学や幸福学の研究を始められたそうです。
ポジティブ心理学は「どうすればもっと幸せになれるのか」を解明する学問であり、ポジティブシンキングとは異なります。ポジティブ心理学では、ポジティブもネガティブも両方を認め、負の感情を抱いている自分も含めて受け入れようという世界観のもとに成り立っています。そして、レジリエンス、フロー、マインドフルネスの3つの概念がポジティブ心理学の柱となっています。
語り部屋では冒頭、モデレーター仲間から「幸せは『なる』ものなのか『ある』ものなのか」という問いがありました。以前、前野さんがあるセッションで、“Happy”という言葉の語源は古英語の“Hap”に由来していると話されたそうです。そこには「運のように起きる、やってくるもの」という意味があるとのことでした。この意味では「幸せは『なる』もの」とも言えます。一方で、やってくる運をただ受け取るという点では「幸せは『ある』もの」とも考えられます。
以前も取り上げた『ミーニング・ノート』というメソッドでは、毎日3つのチャンスを書き出します。心が動いた出来事に対して、自分なりの意味づけをしていくアプローチです。出来事自体は「運」ですが、意味づけをするのは自分という点で、「幸せは『ある』と『なる』の両面を含んでいる」ように思えました。幸せは「『なる』ものでもあり『ある』もの」なのかもしれません。
また、ポジティブ心理学ではレジリエンスが柱の1つとなっています。レジリエンスは逆境から立ち直る力、回復力を意味しています。幸せのベースにはこのレジリエンスが土台としてあるように感じ、その点についても語り合いました。その中では、「最悪のシナリオを事前にシミュレーションしておくことで、どのようなことが起きても安定した対応が取れる選択肢が広がる」という話が出ました。
さらに、『漫才過剰考察』という本に書かれていた、M-1優勝漫才師のエピソードが紹介されました。「勝つこと以外を考えることで、結果として勝つことができた」という話です。この2つの話に共通するのは「複数の物語」の重要性です。モデレーター仲間からは「複数の物語を走らせながら、自分がどのように振る舞うかを考える」という言葉もあり、レジリエンスを育むヒントになりました。
また最後に、逆境に置かれたときのアプローチとして「時間軸で考える」という話がありました。楽天大学の仲山さんは、組織のステージを「イモムシ、さなぎ、蝶」の3つで例えるそうです。その中で「さなぎ」は体の形も大きく変わるカオスな状態です。予期しないさまざまなことが起きる状態は逆境とも捉えられますが、一方で成虫になるための「さなぎ」の状態と見ることもできます。捉え方次第で、目の前の状況が大きく変わるのは面白いですね。捉え方の可能性に目を向けてみることもレジリエンスのように思いました。
日々目の前のことに打ち込んでいるとついつい力が入ってしまいますね。時々でもちょっと深呼吸をして力を抜いてみると、身の回りに幸せが「あり」、そして「なる」ことができる、そんなことに気づけそうです。