#10_変革の要因から考える、理想の変化のあり方
チェンジマネジメントコンサルタントの江田です。
これまでのnoteでは、VUCAの時代と言われる中で、変化が激しくなっていること、そして素早い変革が求められていることをお伝えしてきました。変化に対応できる人材を育成し、組織がスピードに合わせて変革していくために必要なのが、チェンジマネジメントです。
ここで改めて、変化と変革の定義を確認しておきましょう。
変化とは、結果として変わってしまう現象のことを指します。例えば、古くなった建物は、劣化によって状態が変化します。このように、変化は人が意図したものでない場合がほとんどです。
一方、変革は、意図的に変化を引き起こすことを指します。そのため、河の流れに逆らうように大きなエネルギーが必要となります。
今回は、そもそもなぜ変革をするのか、要因について考えていきます。変革には「受動的変革」と「能動的変革」の大きく二つがあります。それぞれを解説していきます。
受動的変革とは
受動的変革とは、周りの環境などの外的要因によって、強制的に変革をせざるを得ない状況に追い込まれていくことです。
たとえば、自然災害。津波によって、町が破壊されてしまった。だから作り直さなければいけない。これは、まさしく受動的変革です。
ほかにも、経済マーケットやトレンドの急激な変化も挙げられます。一昔前はタピオカミルクティーが大流行し、お店を出せば儲けることができました。しかし、今は以前ほど数量が売れなくなってしまいました。これらの商品を販売しているお店は、別の新しい商材を考えなければいけません。
技術革新もそうです。RFIDと呼ばれる情報を埋め込んだタグが生まれたり、ロボット技術が進化したりすることで、周りの環境が変化します。取引先や競合などが導入を進める中で、自分たちも変わらなければ、周りについていけなくなります。
ここまで、直接的な例を挙げてきました。間接的に変化を迫られる例もあります。
皆さんは、「バタフライ効果」という言葉をご存じでしょうか。蝶の羽ばたきが起こした風がいろいろと影響を与えて竜巻を引きおこすといった、予測不可能な挙動のたとえとして用いられる言葉です。
日本語にも、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがありますよね。風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増える。盲人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴を張る猫の皮の需要が増える。猫が減るとねずみが増え、ねずみが桶をかじるから桶屋が儲かる、こんなロジックになっています。
このように、直接的ではなくても影響を及ぼすことはたくさんあります。この影響は小さくありません。実際、この影響によってビジネスモデルを変えざるを得なかったケースはよくあります。世の中の変化に対し、幅広くアンテナを張ることが非常に大事です。
受動的変革への対応事例:富士フイルムとKodak
ここで、受動的変革に成功した事例と失敗した事例を見ていきましょう。
デジタルカメラが普及する以前、インスタントカメラを主軸事業としていたのが富士フイルムとKodak(コダック)です。インスタントカメラのほとんどが、この2社による独占でした。
インスタントカメラは、手軽に使えるカメラとして一世を風靡したものの、デジタルカメラやスマートフォンの台頭により、市場はどんどん縮小していきました。
この変化に対し、2社はどのような道を辿ったのでしょうか。
Kodakは対応できず、2012年に倒産。翌年再上場を果たしたものの、社員数は減少しました。年々減少する売上に対して、対応するために変革が求められました。しかし、スピード感をもった改革を推し進めることができませんでした。それゆえに倒産してしまったのです。
一方で、富士フイルム。今ではフイルムによる技術力をもとに、ヘルスケア事業や化粧品事業など、さまざまなビジネスを展開しています。環境の変化に対し、うまく自社の強みを活かして対応してきた成功事例といえます。
能動的変革とは
受動的変革とは違い、特に必要と迫られているわけではないけれど、自分たちで積極的に変化していくケースもあります。
たとえば、楽天。元々EC事業で大成功を収めていて、日本のeコマースにおけるビッグプレイヤーでした。このまま、ECのみに注力する道もあったかもしれません。しかし楽天は、金融事業として楽天銀行や楽天カード、ほかにも電話通信事業など、さまざまなビジネスを展開したのです。
楽天の場合、かならずしも金融事業に着手する必要はありませんでした。しかし自分たちの中で「このままではやばい。ほかの事業にも着手しよう」という意識が芽生え、そこから変革に乗り出したのです。
ソフトバンクもよく、能動的変革の例として挙げられます。通信事業をはじめ、ECや物流、フィンテック、モビリティなどさまざまな事業に投資しています。今のままのビジネスモデルだけでなく、新しいビジネスモデルの中で、将来芽が出るものを見つけていく意識が根付いています。
今から能動的変革を起こそう
どちらも、これまでのあり方を大きく変革したという意味では同じです。では、どちらのほうが望ましいでしょうか?
受動的変革はリスクに直面した後に行うのに対し、能動的変革はリスクを避けるために行います。必要に迫られて変わるのと、自分たちで積極的に変化していくのとでは、後者の方が断然強いのです。
なぜなら、検討する時間が十分にあるからです。どんどん手を打つ方が、当然成功する確率も上がります。
個人に置き換えてみるとどうでしょう。たとえば、ダイエット。糖尿病になって、命の危険に迫られてからダイエットする。これは苦しいですし、本来理想的な形ではないですよね。一方でそうならないために、自分から思い立って運動する。それにより、厳しい薬の投与をしなくてすむ。これが一番理想的です。
モチベーションも全然違います。ダイエット大手「ライザップ」に通う人たちが成功するのはなぜでしょうか。ライザップでは、自分に対して、痩せるための数値目標を課します。動機付けがあるからこそ、成功できるのです。
ここで重要なのは、「受動的変革」にするか「能動的変革」にするかは自分次第であることです。周りから痩せろと言われても、自分事として「絶対に痩せる」と決意できるかどうか。これが、変革をおこす上での大きなポイントとなります。
能動的変革のポイントは、前回紹介したクレドルモデルで詳しく説明していますので、ぜひこちらもご参照ください。
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