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【詩】ミリヤ・スピヤド

その部屋は体液で満ちていた


『これは一生分のモノを先に出しているのだと今は解釈しています』

主は歪んだ欲望が満たされないまま世を去った
ミリヤは【 せい 】に傷を負ったまま
癒す術なく墓前を後にした

「14歳の誕生日 おめでとうございます」

ボクはあの日 身体の異常に気がついた
館の外には野生動物がいるばかりで
誰にも相談できなかった

もし友達ができたら
擦り切れるほど抱きしめたかった
そんな衝動を抱えていた

引きずるように 暗い廊下を歩いた

勉強はぜんぶ諦めた
お供えの花が枯れ
風に飛ばされたあの日

ポタポタって

冷たい石を濡らした
徐々に広がる染みを 意味を
執事に問うたが

その表情はうかがい知れなかった

随分と身体の線が細くなった

ボクはみっつめだったらしい

好き放題しやがって

部屋の窓から野良猫が見えた
すぐにボクの体液でガラスは濡れた
たくさん分泌されると疲れるんだ

外へ続くホースに
いっぱい流した

DAY1.日記をつけることにした
DAY2.特に何もなかった
DAY3.時計が壊れた 誰もこなかった
DAY4.ホースが詰まって体液が逆流してきた
DAY5.特別に庭へ出してもらえた 野良猫は見つけられなかった
DAY6.少しだけ良い気分だった
DAY7.気持ちよかった

主の墓に背中をあずけて空を眺めていた

時折自分の身体をさわってみる

沈むようにボクは眼を閉じた


隣村の老夫婦が
見知らぬ少女を見たという
とうに目的を忘れたかのような瞳で
最愛を意味する花を摘んでいた


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