「オーストラリアでの暮らし」
半年くらいの間に日本脱出の準備を進めて、
23歳の春に5年続けた仕事を辞め、
妻の文枝と一緒にオーストラリアでの
海外生活を始めることになった。
今の20代では珍しいかもしれないが、
私の場合その時が海外どころか
飛行機に乗るのでさえも初めての体験で、
全てが初体験、
ドキドキ、ワクワクの連続だった。
始めの一ヶ月間は、
イタリア人夫婦の家庭にホームステイしながら、
現地の英語学校に通って、
というおきまりのコースで、
オーストラリアの生活になじんでいった。
英語学校が終わる頃、
シドニーにある日本食レストランの
アルバイトを見つけて働き始めた。
以前の仕事で食べ物の知識があったのと、
料理が好きだったこともあり、
板前さんに気に入られて、
寿司の握り方も教えてもらえた。
一緒に働いている仲間も
日本を飛び出してきただけあって、
個性的な人たちで、
それを仕切っている板長さんは
それに輪をかけたような個性の持ち主だった。
毎日仕事が終わると、
残り物をつまみに飲んで、
語って、騒いで暮れていった。
そんな仕事を半年くらい続けて、
バイト代がたまったところで、
ワーゲンの古いキャンピングカーを買い、
旅に出ることにした。
グレートバリアリーフの島で
シュノーケリングをしたり、
砂漠の真ん中でキャンプをしたり、
ジャングルの中の温泉に
入ったりと毎日があっという間にすぎていった。
そんな旅を3ヶ月位続けて、
仲間の住むシドニーに帰ってきた。
しばらくの間、旅の疲れと、
次の目標が定まらなくて、少し無気力になっており、
昼間で寝て、それから海を眺めながら
ビールを飲んで、夜になるとみんなと話して、
夜遅く寝るというような毎日を送っていた。