自然食との出会い
帰国してしばらくは
何もする気が起こらなかった。
自分はこれから何をすればいいのか、
何ができるのか、
そんなことばかり考えながら
毎日をもんもんと過ごしていた。
しばらくして、
もうじっとしていられなくなり、
行く当てもないまま文枝と二人で
旅に出ることにした。
旅ももうそろそろ終わりになる頃、
ペンションの雑誌を本屋で立ち読みしていたら
信州の安曇野にあるペンションの
オーナーの記事が掲載されていた。
もう旅も終わろうとしており、
何か一つでも手掛かりを見つけて帰りたいと
焦っていたこともあり、
すぐにそのペンションに電話をした。
「何でもいいからお手伝をさせてください。
給料もいりません、寝るのは車でもいいです」
「とにかくなんでもやりますから」
と必死にお願いをしたら、
「それじゃあ1ヶ月後に来てください」と言ってくれた。
とりあえず次にやることが決まり,
新しい目標が見つかったので、
久しぶりにやる気満々で家に向かった。
お手伝いをすることになったのは
信州の安曇野にある
「シャロム」というペンションだった。
自然食に詳しい人には、
良く知られた、
名物オーナーのいるペンションでした。
わたしはここで始めて、
自然食と出会うことになる。
ちょうどその頃のわたしは、
料理屋で作っている料理に
少し疑問を抱いていたのだった。
日本の割烹料理屋でも仕事をしていたのだが、
その料理を本当に美味しいと思えなかったのだ。
もっと素材の滋味あふれるような、
そんな料理を模索していたころだった。
そんな時にそのペンションで自然食を食べて
「この味だ、自分が食べたかったのは」と思ったのだ。