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出たとこ勝負 ④ 〜 梅田パブクローラーズ 〜
徳島の山奥から大阪の都会に出てきて2年が経とうとしていた。2010年夏、僕は梅田が好きすぎて梅田から歩いて帰れる所に住んでいた。
また、京橋のある会社に勤めていた。通常土日は休みだが、休日出勤の多い会社でもあった。
しかし、金曜になれば一人興奮してワクワクが止まらず、いてもたってもいられない状態で、仕事をとにかく早く終わらせようとしていた。
週末夜の梅田の街が大好きなのである。
夜8時ごろ仕事を終え、家に帰り、シャワー浴びて街に出る。
金曜と土曜の夜はどんなに仕事が遅くなっても街に出ていた。そしていつも行くバーが3軒ある。
まず1つ目、東通りにある"KIWIバー"というショットバーで飲み始める。
そこはビリヤード台が店の真ん中にあり、ニュージーランド人のマスターとトルコ人の店員がよく勝負を挑んできた。
ビールを飲みながら球を突いて、自分のボールを減らしていき、最後に⑨番ボールを入れれば勝ちである。
勝てばテキーラを飲ませてくれる。負ければテキーラを買って渡すルールである。日本人はテキーラを罰ゲームに使う事が多いが、ここでは勝利のご褒美なのだ。
そうこうしているうちに飲み仲間が集まってくる。
1人目は慎太郎、自分より5つ程年下だが、何故か俺らと一緒に飲みたいらしく、いつの間にかつるむ様になっていた。
2人目、アメリカ人のマット。彼はトムクルーズに似ていて女子のウケがいい。マット曰く、「トムは自分の伯父さん」らしいが、なぜか彼はめちゃくちゃ貧乏である。
3人目、スコットランド人のニック。彼は毎週夜遅くにやってきて、始発で三田まで帰る。ニックは、朝まで飲む以外の選択肢がなく、僕と同様、梅田の夜に熱狂し過ぎてイカれた行動を取るようになった。
さて、KIWIバーで飲んで喋って盛り上がってきた頃に2軒目へ行こうと4人は店を出た、パブクロールの始まりである。
お初天神の商店街を歩き、とある雑居ビル7階に「ブラーニーストーン」というアイリッシュパブにやってきた。ここはキルケニーの生ビールが飲める。
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まず僕らの"パブクロール"を軽く説明しよう。4人のうち誰かが全員分のドリンクを買ってくる。次に早く飲み終わった者が4人分買ってくる。
ショットバーの店ではキャッシュオンが基本でお金と飲み物をカウンター越しに交換する。
そして3番目の順番が決まったら、永遠とこれを繰り返す。飲むペースが遅いとグラスが自分の前に並びカッコ悪い。
たまに次何を飲みたいか聞くこともあるが、基本的に順番が回ってきた者が好きなドリンクを買ってくる。気心の知れた仲間である、夜通し立って飲むのことが多く、ラムコークやジャクコークを飲んでエネルギーを補給することが多かった。
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さて、3軒目に行こう。そこは北新地の入口にある「キャプテン カンガルー」というオージー バー(オーストラリア)
ジュンというカッコいいバーテンが気さくに声をかけてくれて、いつも夜中になるとたくさんの人で溢れている。
ここでもパブクロールは続く、夜中の1時を過ぎるとこのまま朝まで続けるか、クラブに行くかで、たまに意見が分かれる。
クラブというのは、梅新の交差点にある「サム&デイブ」ここはミナミの箱と同じ系列。夜中の2時ごろがピークで朝まで大勢の若者が踊り狂っている。
入口にセキュリティのガードマンがおり、荷物検査をして入場料を支払い、手の甲にブラックライトのスタンプを押して中に入る。出るのは自由だが、再入場の時にガードマンがスタンプを確認しないと入れてくれない。
ある日、マットはこの入場料がもったいないから外で待っていると言い出した。外にはハンバーガーの屋台が出ていたり、酔っ払いが歩道で潰れてたりするが、殺風景である。
入場料1,500円を払えないトムクルーズを置いて、仕方なしに僕は中に入り、そして一旦外に出た。
「マット、手の甲を互いに擦り合わせれば、このスタンプ写るんじゃねーか?」
そうして恐る恐る再入場の列に並び、中に入った2人は、
「ナイス ワン ブラザー!!」
と抱き合って喜んだ。
続
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