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華麗なるキャリアウーマンたち ③ 〜 アイロンパーマのヒーロー 〜
キャリアウーマンの話を書いていたのだが、阪神淡路大震災の話題が出たので、ついでに、上山という中学3年のクラスメイトの話を書こうと思う。
上山の家は、とにかく貧乏で、母親が唯一の稼ぎ頭なのに、あまり働けないといった状況であった。また彼には2人の弟がいて、まだ小学3〜4年生である。
こんな彼の状況を見兼ねたのか、担任の先生は、上山がまだ中学生なのに、働くことを黙認していた。
あれは中学3年の春から秋にかけてであった。彼は毎日、4時間目の終わり頃になるとガラガラ〜っと教室のドアを開け、隠れるように、こっそりと後ろの席に座る。
午前中の仕事を終わらせてきたのだ。そしてチャイムが鳴り、
「腹へったー、いっただきまーす」
とみんなで給食を食べ、昼休みを一緒に過ごす。すると、
「じゃあ、行ってくるわー」
5時間目のチャイムと共に、午後からの仕事へ向かう上山。
しかし、彼には悲壮感がまったく無かった。まだ誰も持っていない、ポケベルを見せて、自慢したり、アイロンパーマをかけて大人感を演出していた。
その翌年の1月に地震があり、2月中頃だったと思う。彼の働く土建屋が、神戸の震災復旧のボランティアに行くというので上山も参加していた。
そして校長先生は、そのことを卒業間近の全校集会で、
「上山君ちょっと前に来なさい」
と壇上に立った上山をまるで、ヒーローのように褒め讃え、校長はボランティアや仕事のことをみんなの前で自慢げに説明した。
今まで担任の先生が、中学校の生徒を働かせていると、ひたすら隠していた事が、これで学校公認になったという話である。
その彼は今では、従業員20人を抱える建築会社の社長をやっている。去年の夏、実家へ帰った時に偶然会って話をした。
自分の周りには、大学に行かなかった者の方が、いい暮らしをしていることが多い気がする。
完
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