おい、福田!④ 〜 なんちゃって大工職人 〜
高校の同級生である福田の話を書いている。
5年振りの再会で2人の積もった話は3時間にも及んでいた。
勿論、自分の事も話した。勤めていた会社と陸上やトライアスロンを辞めて、今は大工の見習いをしていること。
上京して貯めたお金が、もう底をつきそうになっていることなど、お互いの近況を話している中で、福田は、
「俺も実は大工職人として現場に行ってる」
と言い出した。ちょっと待て!と、大阪で浄水器を売っていると思っていたが、新たな展開に戸惑いながら、僕は、
「どこでそれをやってんの?」
と尋ねた。福田は長野県から北陸に向けて新幹線開通工事の現場に住み込みで行っているらしい。
それもまた、スポーツ新聞の求人欄で見つけた仕事である。最初は日当8,000円のゴミ拾いの仕事で入った。そうこうしていると大工経験者を探していると聞いて、彼は型枠大工の手伝いを、3日しか経験していないのに、
「3年やってました」
と嘘をついて採用された。仕事内容は新幹線のレールの土台となる枕木の固定で、五寸釘という長くて大きい釘をカナヅチで打ち込んでいく。
しかし、福田は釘をまっすぐ打つことが出来なかった。打ち始めて直ぐ釘を曲げていたという。それを聞いて僕は、
「え、そんなんで大丈夫なん?」
と心配になった。すると福田は、
「作業する間隔が10メートルぐらい離れてるから、見えへんねん」
と言い切った。福田は相変わらず無茶苦茶である。あの北陸新幹線は絶対に気をつけた方がいい。
しかも彼は素人丸出しの大工だが、日当を2万円も貰っていた。それは自分の親方よりも高い給料である。
福田とはこの後、4年後に会うのだが、お互い転々と職を変えながら、オリンピックのごとく4〜5年に一度、定期的に生存を確認するという機会を得ていた。
今回はこれにて、筆を置こうと思うが、時を見て次のシリーズ、福田の華麗なる転身を書こうと思う。
完
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