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「成り行き」を正しく見極めそれに抗う-「新版 はじめての課長の教科書」に学ぶ(7)

管理職になると向き合わざるを得ないことの1つに予算管理があります。管理職にとってはストレスの種と言えるでしょう。また制度的に万全と言えないながらも功罪を持ったまま運用されています。その最もわかりやすい問題は『はじめての課長の教科書』における以下の文章に凝縮されています。

「容易に達成可能な目標なのに、もっともらしい理由をつけて、非常に高い目標であるかのように脚色する」ことが予算管理の隠された本質でもあるのです。

引用:はじめての課長の教科書
第3章課長が巻き込まれる3つの非合理なゲームより

高い目標を立て果敢に挑戦する意欲をなくさせるという弊害は、成長を志向する企業組織においてマイナスが大きいはずなのですが、管理職の人事考課に対する都合の良さや特に上場企業が持つべき対外計画順守のIR的意味もあるのでしょう。功罪の功の方が多いということで、予算管理制度は大半の企業で運用されています。

この予算管理業務オペレーションの解説は、先の『はじめての課長の教科書』や管理会計の専門書に譲るとして、予算と向き合う中で管理職として自分が一番大切だと思う視点があります。それは「成り行きにどう抗うか」ということです。

新規事業や立ち上げて間もない状態を除き、大抵は事業としての慣性があります。今回のコロナ禍のような特殊な事情が発生しない限り、既にわかっている変化(受注残の影響、顧客の増減、製品の改廃など)を織り込んだ着地見通しが得られます。これを「成り行き(の売上や利益)」といいます。

この「成り行き」は社会情勢、市場動向、顧客の購買動向、製品サービスの評判、自社要員の成長度合いなど複数のパラメータを元に見極めます。単なる今期業績の横引きを「成り行き」という人が言いますがこれは違います。今期の業績にも特殊要因があるならそれは差し引くべきだし、新卒による増員や定年などほっといても増減が予想されているならば、それも影響します。言ってみれば、自部門の内外環境を正しく把握できているかが試されているということです。全ての議論はこの「成り行き」の予測から始まるといってよいでしょう。

この「成り行き」が一定の精度で予測できて初めて、「成り行き」に対してどう抗うかを徹底的に考え抜きます。多くの場合、成り行きから得られた数字は経営層から降ってきた目標数字には足りないことが多いので、そこから何を変えることで、どうプラスのインパクトを起こすかをチームで必死に議論することになるでしょう。

以上からもわかる通り、予算に向き合う基本的な動き方は以下の3つになります。

1) 「成り行き」を想定する。
2) 得たい目標と成り行きのギャップを埋めるために、何をどう変える(改善する)とよいか考える
3) 2)で立てた作戦を問題を解決しながら遂行する

時にこの3つをごっちゃにしてしまい、たまたま当てずっぽでやった施策がうまくミートして予算達成し評価を得てしまうということもあります。ただこれは再現性が極めて低いアプローチです。

特に1)と2)を一緒に考えてしまうことはよくあります。来期目標に対して今期からいくら増やすのか、だからどうするのか?という議論のやり方です。ただ例えば分母として人員が自然増している中で発生した結果と、生産性が向上した結果は分けて考えおかなければ、施策の影響が正直わかりません。(とはいえ全く考えないよりは全然良いのは間違いありません)

期初の計画もこの3つに分けて整理しておくことで、振り返りの精度も高まります。この振り返りを繰り返すことで、再現性の高い予算管理能力が身に付きます。もちろんこの1~3は当然それぞれが奥深いスキルノウハウが求められるので、これを読んですぐに実行できるなんて話は当然ありません。ただ特に管理職初心者の方に基本的な型としておすすめしたいアプローチです。

ちなみにこの「成り行き」から入るプローチは短納期や予算が少ないプロジェクトの計画時でも有効です。まず納期や予算の制約がない中でやる場合の成り行き案を考えてみて、そこからどう納期工数を圧縮するかを考えるやり方がおすすめです。
普通にやるとこれぐらい掛かるというのを想定せずに目標値から結果を合わせに行くと、どうしても辻褄合わせが無意識に起こり、タスクの漏れや過小評価が起こってしまいます。難易度を共有する意味でも成り行き案を用意してステークホルダーと共有しておくことは効果的です。参考まで。

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