部下に辞めたいといわれた時の対応-「新版 はじめての課長の教科書」に学ぶ(10)
管理職になってどうしても避けられないことの1つに、部下からの退職の相談があります。流動性の高い業界であればあるほど一定の頻度で起こります。「新版はじめての課長の教科書」でも「避けることができない9つの問題」の2つ目として「部下が『会社を辞める』と言い出す」が挙げられています。書中では部下の退職理由の大半が上司であるというひどい真実が語られます。(確かにそういう面もあると思います)
現実的には、そもそも引き留めたい人材なのかどうかという点がありますが、もしそうだった場合どう振る舞うのが正解なのでしょうか?
私が最も大切だと思う点は「チームで対応する」ということです。
部下の退職意向の表明を受けた場合、まず上司である自身での対話はもちろんですが、当人に影響力を発揮できそうなメンバーを大至急招集し状況共有しましょう。
ここには当人と関係が比較的近いメンバだけでなく、人事権や給与条件の調整もできる権限をもった人、一般的には役員や場合によってはトップが含まれていることが重要です。できれば当日中にそうしたチームで緊急のMTGを開催し、最近の様子や言動なども確認しながら、コミュニケーションプランを考え実行に移します。もし人事異動なども選択肢の中に入れるべきだということなら、権限を持つ人が間髪入れずに直接本人とコンタクトを取り対話をするということもあるでしょう。
一番最悪なケースは、最初に話を聞いた上司が自分で何とかしようと話を自分の上司レベルでクローズしてしまうことです。課長・部長と関門の如く1つづつ通過するわけですが、元々まだ意志が柔らかかった状態でも、何度も面談で退職理由などを話すうちに、本人もだんだん意志が固まっていことはよくあります。
退職者の発生は管理職にとってもネガティブな話なので、あまり情報を上げたがらないということが背景にありますが、とにかく部下から退職相談を受けたら、まず早急に「本人に影響力を発揮できる人」という選定基準でチームを組成し、複数人で対応にあたることがおすすめです。
実際一定規模以上の大企業においては、個人に対する個別対応や例外対応はコンプライアンス的に難しいかもしれません。また社員に対してのトップマネジメントの方針が「考え方が去る者追わず」という場合も違った対応になるでしょう。
ただ一般的に退職を考えた人が自分に対する誠意をどう感じるかでいえば、アラートを上げてからいかに迅速かつ会社が組織として動いてくれるかという点にあります。人はいかに自分を重要に扱ってくれるかに影響を受けるという原則はもはやいうまでもありません。
実際こういう対応をしたとしても必ず退職を止められるなんてことは当然ありえません。ただチームで対応する中で直接の上司も含め皆に振り返りと気付きの機会が生じます。中には心から応援したくなる新たな挑戦をする人もいます。いづれにしてもチームで対応することで、一人の社員の退職という残念な事象を、組織として最大限の学びと成長の機会とすることができます。
管理職はどんな場合でもそうですが、問題が起こったら一人で抱え込まないことが大原則です。倒れる時は前向きに倒れましょう。また起きればいいのです。仰向けにひっくり返されて卒倒することが最も避けるべき結果と言えるでしょう。
参考書籍
組織の管理職としての振る舞いが網羅的に学べます。文字通り初めて課長など管理職になる方、管理職を目指す方におすすめの書籍です。
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