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「ご近所づきあいを大切に」

村民インタビュー第2弾は、泰阜村の中でも特に山深い栃城地区から。

読み方は「とちじろ」

難読レベル、まだまだ初級ですね。
泰阜の人たちはよく「とんじろ」と呼んでいます。

ご家族でアマゴの養殖業を営む木下千代ちよさん。
泰阜村に来たのは20代の頃でした。


―――栃城ってどういうところ?
千代さん:この家の前の道は、村の財産の村有林を切り出すために開けた林道なんだけど、私が村へ来た頃は道もなくてね。近所だけで暮らしていたから、近くのじいちゃと猫や犬の話ばかりしてたんな。外との関わりもそうないし、話題が少なかったんだな。しばらくして、一級河川があるもんで魚(アマゴ)を飼いだして、道が通ってからは外へ出て稼ぐ人も出てきて生活は豊かになった。今では私も魚を売りにイベントに出ると、人付き合いも増えるし話題も増えるし、心も豊かになったわな。


―――アマゴの養殖はいつ頃始めたの?
千代さん:泰阜に来て10年ばかし経った頃かな。甘露煮だけで始まって、要望があって途中から塩焼きもするようになった。最初は村の人も一緒にやってたんだが、今はうちだけ。

大きなアマゴをその場で焼いて食べさせてくれました。


千代さんは五平餅も作っていて、イベントなどがあると何十本も作って販売しています。

私も手伝わせてもらいました。


―――作り方は誰かから習ったの?
千代さん:習うっちゅう程のもんでもないが、お姑さんがするのを見て自然に。うちは小判型だけど、家庭によっていろいろなんだに。薄いのとか、丸くて小さいのを2つのとか。


―――普段の買い物はどうしてるの?
千代さん:
私は車を持っとらんから、福祉バスに乗せてもらって買いに行くのと、月に2回浜松から行商が来るから基本はそれでだな。


―――福祉バスって?
千代さん:村がやってる巡回バスで、スーパーや病院や行くには便利なんだに。とんじろには週に1回来てくれる。これが出来てからとんじろの人は助かっとるよ。買い物や病院、銀行、なんでも済まして来ちゃう。


―――福祉バスと行商で充分?
千代さん:突然の来客で困ってお父さんに車出してもらって買いに出ることもあるが、基本的には充分だな。たまに卵やなんかを切らしてしまって「欲しいなあ」と思うようなこともあるが、「卵がなくたって暮らせんわけじゃない」と思って、有る物を食べればいいわけだよ。


―――ここでの暮らしで不便なことはある?
千代さん:とにかく交通の便が悪いで、車の免許がないと、ちっと難しいわな。私も、お父さんが来年85歳で、免許を返すってなったらどうしようかなぁ…。

―――気候はどう?
千代さん:雪も大変降るわけではないし、そう困らんよ。それより、台風や大雨が降って、道がふさがったり崖が崩れたりするのがおっかないね。
ここにいちゃあ春の芽吹きや秋の紅葉、季節の移り変わりが分かるよ。
春には採ろうと思えばいろーんな山菜が採れる。私はいろんな人が喜んでくれるのが楽しみで、採って何か作っちゃあ分けてやってるよ。


―――最後に、泰阜村への移住を考えている人に向けて、何かメッセージはありますか?
千代さん:野菜やお花に興味があってちょっとでも作ってみたら、生活が楽しくなると思うよ。ものが採れる喜びもわかるし。
何より、ご近所付き合いをできる人なら、泰阜村へ移住してきても溶け込んでうまくやっていけると思うんだに。何かの時には手伝ってあげたり、柿を干すときなんかにもね。


***
お話ししている中で、「あの時は○○さんにこんなことをしてもらった、助けてもらった。おかげだよ。(おかげ=ありがたい)」と、何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
厳しい自然の中で何かを育てたり、不便もある村の中で暮らしていくには、助け合いが欠かせないのですね。


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