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家で亡くなったら警察沙汰!?

  ここ数年、著名人が自宅で療養を続け、亡くなったというニュースを耳にすることが増えてきました。その一方で、「家で最期を迎えたい」と言うと「家で亡くなったら警察沙汰だよ」と忠告する人もいます。少し前までは医師ですらそのような人もいました。
 それは、自宅で亡くなる方のすべてが、穏やかな「在宅看取り」というわけではなく、異状死や不審死も含まれているからです。それが警察に届け出が必要な、いわゆる「警察沙汰」です。しかし、自宅で亡くなっても、警察に届け出が必要な場合とそうでない場合は、明確に分かれています。医療従事者でも、そのルールを誤って解釈していることがあり、このことが、本人が望んでいても、自宅での看取りがかなわない理由のひとつとなっているのではないかと考えます。
 厚生労働省の「死亡診断書記入マニュアル」(2020年度版)では、自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合に「死亡診断書」を、それ以外の場合には「死体検案書」を交付する、と記されています。死体検案書は医師のみでも交付できるため、検案書交付のために警察を呼ぶ必要はありません。
 警察を呼んで検視が必要になるのは、死体を検案して「異状」を認めた場合のみです。また、在宅で医師が最期の時に立ち会っていなくても、生前の診療後24時間以上たって診察した時、生前に診療していた傷病に関連するものと判断できる場合には、死亡診断書が交付できます。しかし、救急病院に搬送されて、病院で死亡が確認された場合には、状況がわからず、検視となってしまうこともあります。
 「死亡診断書」か「死体検案書」か、はたまた「警察沙汰」なのか・・・。「自宅での看取り」が、見直されている今だからこそ、その人の最期を誰がどのように診断するのかを、医師のみならず、かかわる専門職が理解しておくことは重要なことだと思います。
 在宅医療にかかわる人たちにとって、自宅での看取りは身近なものですが、病院で亡くなる人が約8割を占める今の日本社会では、最期の時に、本人の意向よりも周囲の人の意見や医療が優先されることが少なくありません。
 だからこそ、かかりつけ医や在宅医、家族や友人らと、自分は何が好きで、どこでどのように過ごしたいのか、そして、どんな人生の最終章を迎えたいか等を、元気なうちから、いろいろ話し合っておくことが、とても大切なことだと思うのです。

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