正社員は何が均衡しているのか
人は基本的にバランスを求める。
返報性の原理というのがある。相手から何かを受け取ったときに「こちらも同じようにお返しをしないと申し訳ない」という気持ちになる心理効果のこと。
人間社会で仕事をするとは、会社への貢献と、報酬がバランスするということ、考えるのが基本だ。
弁護士やコンサルなど専門職はわかりやすい。
タイムチャージなので、ある案件にどれだけの時間を使ったかで報酬が決まる。
これと真逆にあるのが、正社員の仕事だ。
これについて考えてみたい。
いわゆる総合職といわれるようなもので、そもそも新卒で入った時点で自分がどんなことをやるかわからない。転勤もある。仕事は変化していく。
一つの補助線として、ゲゼルシャフトとゲマインシャフトという概念を考える。
前者は、特定の目的のために人々が集まることを言う。つまり、プロ野球観戦が好きだから、一緒に集まる、というようなもの。良いところは、集まる理由が明確だからすぐに心が満たされるだろう。悪いところは、その共有する関心がなくなれば、一緒に集まる理由がなくなり解散となることだ。
では、ゲマインシャフトは何かというと、これは、特に理由もなく、一緒にいる集団。家族であったり、小学校のクラスメートや、地縁に根付くもので、狙って集まるものではなく自然発生的に気づいたら一緒に時を過ごしている。特に共通の趣味嗜好があるわけではないので、わかりやすい共感が発生することは少ないかもしれないが、だからこそ、よくわからない絆が生まれることもある。
正社員というのは、このゲマインシャフト的なものといえるだろう。
自分の人生であったり時間という動かしがたいものを、ある種思考停止で預ける。縁があるということで、身を任せる。
正社員を雇う会社は、その自由度の高い奉仕に対して、中長期視点で報酬を設計する。短期的な評価ではなく、会社への忠誠心なども含めて、着実にリスクなく報酬が上がったり、ちょっとしたミスでは解雇されるようなこともない。病気になっても待ってくれるし、家族の面倒もみてくれる。
なので、働く側としては、中長期視点でコミットしないと提供したものと報酬が釣り合わない可能性が高い。
業務委託のように専門性高く報酬を得るのと、正社員のように身を委ねて中長期関係で報酬を得ること、どちらもメリデメがあり、どっちが優れているというようなことはない。
ただ、今のような情報化社会で、いろいろな生き方や情報が入って来る中で、いろいろな誘惑や魅力的な話が見えてくる中、1つの場所に留まることができるのだろうか。それは働き手としても、経営者としても前提にし辛いのではないかと思う。
しているのがわかりやすい。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト