詩歌:すりぬけてゆく
三十代半ばで、独身の派遣労働
同僚からも兄弟からも共感されない、俺は泡沫
富めるものがさらに富む街、贈賄と汚職の左遷報道
安酒と土手煮で、あがる口角
林立するビルのあいだ、たよる宛もなく
手にした傘を向ける、顔もしらない英雄に撃つ
ブルーカラーがビルにはりついて汗をかく
作業員は、くらい部屋でそのときを練習しつつ
花を抱えてベビーカーを押す女性がいた
いつしか忘れてしまった愛おしさ
俺たちはハード的に与えられた機能しか
うまく扱えなくなったのか、価値観も立場も固定化した
スワイプするニュースが俺に叫んでいる、知っとくれ
だって、あの殺人犯は俺の一個上