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あえて「ババ」を引くキャリア戦略【負け戦のすすめ】
とんでもないミスをやらかした炎上案件。死ぬほど納期かつかつな仕事。退職者が立て続けに発生して、どうしようもなくなった部門の再生。
そういう「組織のピンチ」に立ち向かう仕事は「やりたくないな」と思う人がほとんど。
この手の仕事を自ら手を挙げてやることを「ババを引く」と僕は定義している。普通に考えたら、やりたくないし、させたくもない。
とはいえVUCAの時代。どうがんばっても元の業績には戻せないことが自明の事業の数字責任持つとか、よくあることだと思う。きっとこの傾向はこれからも続く。事業や組織の大きな変化の裏側で、必ず誰かが「ババ」を引く。
みんなババを引きたがらない理由
「今回もなんとかババを引かずに済んだ」
そう安堵して、ババを引いて皺寄せを受け止めた誰かを可哀想に思う。それはサラリーマンとして当然に抱いてしまう心理で3つの理由があると思う。
【1】人は「失敗しないこと」を求めているから
プロ野球選手を目指すとか、起業家として大成功するとか。ほとんどの人は目指さない。それはひとえに「失敗する確率が高いから」だと思う。つまり、失敗して恥をかくことを恐れている。
プロスペクト理論といって、人は「うまくいくメリット」よりも「うまく行かないデメリット」を2〜3倍にも大きく評価して意思決定をしている。
プロスペクト理論
不確実な環境では、人は損失を極端に恐れて回避する。
得する喜びより、失う悲しみの方が大きい。
「成功しそうなこと」よりも、「失敗しないこと」に人が流れていくのは自然な流れ。あえてババを引くのは失敗の確率が高いので、誰もやりたがらない。「キャリアに傷がつく」とか考えたりする。
【2】努力と報酬が釣り合っていないと感じるから
「ババ」を引くのは苦しいこと。無茶してがんばっても、現状維持してぬくぬく仕事をしていても、来月の給与はたいして変わらない。
だからわざわざピンチに立ち向かい一生懸命になる理由がない。
努力-報酬不均衡モデル
「努力」:仕事の要求度、責任、負担
「報酬」:経済的な報酬、心理的な報酬、キャリアに関する報酬
【3】「自分にはできない」と思っているから
とはいえ、真面目に仕事している人なら多かれ少なかれ「なんとかしないとやばいな」とは感じる。それでも手を挙げてババを引くことができないのは、「自分にはこのピンチを切り抜ける能力がない」と信じているから。
きっと誰か優秀な人がなんとかしてくれるだろうし、自分がその「誰か」ではないと思っている。自己効力感がないので、自分には無理だと思ってしまっている。
自己効力感
ある状況を変化させる手段に対する自己評価。
遂行できるという確信の程度。
あえて「ババ」を引くメリット
ババを自ら積極的に引きにいくのは、普通じゃない。
だからこそ、僕はあえて「ババ」を引くべきだと思う。
それは「非連続な自己成長」と「桁違いの社内評価」を実はノーリスクで得られるから。
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【1】非連続な自己成長ができる
会社が非連続に成長するのは、リスクをとって不確実性に挑んだ時。それは個人も同じ。
ぬくぬくサラリーマンしてると、毎年「105%」成長することはできるけど、「300%」成長とかはできない。去年と同じ仕事ずっとやってんなぁって気がして、世間から置いていかれる。
非連続な成長を求めるなら、あえてババを引いてみる価値がある。各論ではなく、本質が見えるようになる。社内政治とか出世争いとか少し冷めた目で見るようになって、顧客と市場のことしか考えなくなる。
こういう仕事をノーリスクでできるのがサラリーマンの特権。
起業でもしない限り、巡り会うことのできない危機。いや、起業したとしたらゼロからスタートして失うものがないので、そういう意味では起業よりハードな修羅場体験をできるのが組織の中で働くサラリーマンがあえてババを引くことでしか得られない機会だと思う。
【2】ババを引いただけで下駄をはける
ノーペインノーゲインの法則。何かを失うほどの覚悟を持つことで、初めて大きな対価を得ることができる。組織のピンチに対して、自ら手を挙げて逆境に挑むことはそれだけで賞賛されるべきこと。
誰がやっても失敗するだろうとみんながわかっている状況なら、なおさら良い。ダメで元々なら、百に一つうまくいけば最高の救世主になれる。
実は桁違いの社内評価をノーリスクで得られるおいしいキャリア戦略かもしれない。王道のエリート出世ルートからは外れるかもしれないけれど。
ババを引く前に必ず考えるべき5つのこと
【1】ババを引かずに済む方法を考え尽くす
ババを引くときは、だいたい撤退するしないとか選べない状況なのですが、組織としてババを引く必要がないなら、引かないに越したことはない。
「この闇案件なんとかしてくれ」っていう粒度でしか上長が見えてないなら、「これ撤退しないとやばいです」「謝罪して案件止めた方がいいです」と提言するのがまずすべきこと。
やるしかないからやるのではなく、やらなくて済む方法論を最大限模索する。
【2】ババを引くタイミング
最初から修羅場はきつい。ある程度職場に慣れてきて、「成長角度がちょっと鈍化してきてるな」なんて思い始める入社2、3年くらいのタイミングとか、マンネリ化して自分がマイナス成長しているなと感じたら挑むと良いと思う。
【3】経営陣の1人を絶対的な味方にする
経営陣が味方じゃないからこその修羅場もあったりするから難しいところなのだけど。経営陣のコミットが引き出せないなら、それは大した組織のピンチではないし、ピンチをピンチとして認識できない経営陣ならババを引いても報われないので逃げた方がいい。
【4】業務の逃げ道を用意しておく
「業務の逃げ道」がないと1人で頑張ってもだいたい突破できず頓挫する。頼れる人は躊躇なく頼りまくって、手段を選ばずことを成すことだけ考える。
仕事大好き人間で残業60時間くらいくらいなら苦なくやっちゃうタイプだけど今は業務が落ち着いているみたいな人に根回ししてマジでピンチの時は助けてほしいと頭出ししておくとか。それが心の逃げ道にもなるから本当に大事。
【5】心の逃げ道を用意しておく
はじめから負け戦なんだから、潰れそうになったら逃げること。
自分が潰れることがプロジェクトを空中分解させる最大のリスク要因なので、「心の逃げ道」を確保しておく。友達に愚痴るとか、釣りとか、なんでもいい。
ババを引いてみよう!
ババというのは、厄介者でもあり、最強の切り札でもある。
負け戦を一度経験すると、「致命傷を避けて組織を前に進める感覚」が身に付いてくる。もう本当にどうしようもない状態で、最低限のこともできてない中でドライに優先順位付けして、切るところを切って、なんとかする。色んな人に頭を下げて、謝罪して、それでもハレーションは起きて、なんともいえない罪悪感と疲労感だけが残る1日もあったり。
でもそれを完遂した先には想像もつかない景色を見てる自分に会える。
ババをババをして機能させるには、「あえて引く」ということ。
誰かに「引かされる」のでは、ババはただの厄介者で、切り札にはなり得ない。
マンネリ化した仕事に飽きたら、あえてババを引いてみては。