”あらゆるものが感染爆発する”読書note87「感染の法則」
コロナウィルスをはじめとする感染症から、金融、アイデア、暴力、感情までが「感染」する。数理モデルを使って、「どのように物事が広がり、収束うするのか」を解説してくれる本である。
SIRモデル
「伝染病は一般に、感受性のある人が一人残らず感染する前に終息する」
感受性保持者の集団は時と共に縮小する。毎日新たに感染する人よりも回復する人がほうが多くなる。これが集団免疫の考え方の基礎である。
出来事の理論
ロナルド・ロスはこの数理モデルを使って蚊によるマラリアの感染メカニズムを解明した後、「感染はこうした生命体に起こるいろいろな種類の出来事の一つにすぎないのだから、われわれは『出来事』一般を対象とすべきだ」と主張した。
この考え方をマーケティングの世界に応用したのが、ロジャースの普及曲線、いわゆる「S字カーブ」である。イノベーターからアーリーアダプター、最後にラガードが取り入れるというアレである。
再生産数「R」
マクドナルドの蚊の研究論文の補遺に含まれていたアイデアを20年後、数学者クラウス・ディーツが取り上げたのが、感染者一人から何人の感染者が出るかという考え方である。
R=Duration × Opportunities × Transmission probability × Susceptibility
「持続時間(Duration)」「機会(Opportunities)」「伝播に至る確率(Transmission probability)」「感受性(Susceptibility)」の4つの要因「DOTS」に左右される。Rが1より大きければ感染のレベルは上昇するのだ。
この感染の法則は、金融危機の伝搬、アイデアの広がり、暴力の感染、自殺の感染、オンラインでの拡散、コンピュータウィルスの感染など、あらゆる「出来事」の広がりの分析と対策に活用されているのである。