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”人を説得する手法”読書note114「基礎からわかる論文の書き方」小熊英二著
理系でも文系でも、どの学問体系にも共通する「論文の型」を紹介することを目指した本である。学生に卒論指導をする立場として、改めて、いろんなことを考え学ぶきっかけとなった、気がする。
1.主題と対象
実証的な科学とは何か。それは、この世の「見たり聞いたりできるもの」を観測して、「見たり聞いたりしない法則」を探求する試みです。
そう考えるなら、対象とは、「見たり聞いたりするもの」です。難しい言葉でいえば、経験的に観測できるものです。
では、主題とは何か。それは、個別の対象とは別の次元にある、普遍的な法則の探求です。
まさに、主題と対象、学生が論文のテーマを考える際に迷ったり悩むポイントであり、ここを最初に理解することが重要なのだと再確認できる。
2.リサーチデザイン
わかりやすくいうと、いくつかの方法methodを組み合わせて、一つのシステムにするのが方法論(調査設計)です。
方法論はレシピであると、「何かを作るための一連の手続きを記述したもの」と考えると分かりやすいと解説している。
3.推論の考え方
とっている推論が➀演繹deductionか、②帰納inductionか、➂アブダクションabductionを組み込んだ仮説演繹法か、といった話になります。ひたすら、実験結果を積み上げるのが帰納、法則を前提にして(信じて)検証するのが演繹、いちばん現実を説明できそうな仮説を設定するのがアブダクション、仮説を作りながら仮説検証をくりかえしていくのが仮説演繹法ということになるでしょうか?
マーケティング研究は、まさにアブダクションを組み込んだ仮説演繹法を使って行うことが求められている?!
4.事例研究とサーベイ
「全体を推し量りたいなら幕の内弁当がいいだろうし、変わった一品料理を楽しみたいなら寿司とかでしょう。」ここで、幕の内弁当に例えているのが、英語では「サーベイsurvey」にあたります。これは大きな集団、たとえば日本全体とか、一つの自治体住民とかの全体を統計的に推し量るために、調査対象のサンプルをまんべんなく集めてくるやり方です。
それに対し、ここで「寿司や納豆」に例えているのが、事例研究case studyです。これは、それじたいが興味深い対象を調べます。「とても極端な事例」でもいいし、「とても平均的な事例」でもいいし、「極端な事例をいくつか調査して比較する」でもいい。
これもゼミ生が悩むポイントの一つである。何を明らかにしたいのか、自分ができる調査研究はどの範囲かを考えながら、決めていく必要がある。