塚本晋也監督「野火」のこと
「野火」は小説では読んでいたけれど、映画は初めてだった。2015年に、初めて一人で見に行って帰りにふらふらになった。あの衝撃的な体感を私は「野火熱」と呼んでいる。怖いけれどまた見ようとおもった。
人間は何を食べたらいいのだろう「野火」見しのちのスーパーの灯り
一等兵演じる俳優 美術さんが作りし人肉口に入れたり
と詠んだ。これは私の歌集『窓の匂い』に入っている。
その後、夫と、今はもうない立誠シネマで「野火」を再見し舞台挨拶に来られた塚本監督にもお会いできた。
蛆虫にはパスタを代用 弱りたる蝿に糸つけ顔にたからす
これはその時の監督のお話や『野火』全記録を読んで作った一首。次の歌集に入れるつもり。
その後、映画監督を目指す息子と3度目の「野火」を見に行った。
2016年に息子(吉川鮎太)はpffで賞をもらってその時のポスターがちょうど隣合わせで塚本監督だった。私は内心嬉しくてたまらなかった。そんなミーハーなことを言うといつも怒られるから黙っていたけど。
映画のチケットが懐かしく出てきた。4度目の「野火」体験をまたぜひしたいと思っている。