塔の中には何がある
福岡県立美術館 佐藤武夫 1964
その建物は、1964年に美術館と図書館を併設した
福岡県文化会館として開館し、1985年の改装を経て
福岡県立美術館としてリニューアルされ今に至る。
建物の構成は、低層の四角い箱と背の高い塔の
組み合わせである。塔の中には何があるの
だろうと、調べてみると収蔵庫のようである。
塔の高さは50mもあり、赤みがかった茶色の
レンガタイルは特徴的な外観を作り出している。
タイルには博多織を連想させるパターン貼りや、
ライン上に突起を持たせた納まりが施されており、
シンプルな構成に、細部へのこだわりが際立つ。
コンパクトな美術館であるが、内部階段は充実
している。円形の巨大なトップライトにより、
階段室は光に満たされる。トラバーチンで仕上げ
られた階段は、この美術館の主役のようである。
緑に囲まれ素朴な佇まいを持つこの建物は、
直にその役目を終え、移転される予定である。
施設の老朽化や、機能的な不足が理由である。
古き良き建物が、時と共になくなっていくのは
仕方がない。この建物の記憶を留めておこう。