いつまでも冒険心を持ち続けていたいと思う
植村直己冒険館 設計 栗生 明 1994 兵庫県 豊岡市
植村直己の『知恵と技術』に加え、『ひととこころ』
を後世に伝えるための施設として1994年に開館した。
今年4月にリニューアルしたとのことで、随分前に、
まだ小さい子供達を連れて訪れたことを思い出した。
植村直己(1941-1984 )は、
1970年に世界最高峰のエベレストに
日本人で初めて登頂した人物である。
1984年、冬期のマッキンリー単独登頂後、
下山中に消息を断ち、帰らぬ人となった。
植村直己から子供達に残されたメッセージ。
世界の美しさ、未来ある子ども達を見つめる
力強さと優しさに満ち溢れた言葉だと思う。
世界の圧倒的な美しさを、強く感じ取ってきた人の
不可能と思えることを、地道に成し遂げてきた人の
重みのある言葉に、身の引き締まる気持ちになる。
内部には、植村直己にまつわる様々な展示がある。
テントにはいったり、重たい装備を担いだりと、
植村直己の経験を追体験できるところも面白い。
リニューアルで冒険度がパワーアップしていて
遊んで泊まれる「ぼうけんステイ」プランなども
あり、ネーミングからもワクワクする感じである。
建物は、冒険館の名に相応しく探検欲を刺激する。
クレパスをイメージしたコンクリート壁の通路は、
未知なる空間へと、期待をふくらませてくれる。
打放しコンクリートやガラスの無機質な素材感は、
周辺の山里の景色と対象的に建物を印象づける。
多くの人に植村直己のメッセージが伝わることで、
この建物に関わる人達の多大や努力が報われること
を願ってやまない。また機会があれば訪れたいと思う
大好きな、ずっとつなげて欲しい建物の一つである。