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そして心地のよい場所で静かな時間を

松伯美術館に広がる動きのある空間を後にして

奈良の西側をめぐる旅も終わりへと。松伯美術館の
存在は知っていたが、内部の空間を初めて体感した。
30年前に建てられていても、思いが込められた建物に
感動して、旅への名残りを惜しみつつも次の目的地へ。


楽しみにしていた大和文華館はまさかの休館で
がっかりしつつも、その少し先に建つ中野美術館を訪れた
どのような美術館かは知らずに初めての訪問で
訪問者を出迎えるような遊び心のある下駄のオブジェ
池へと続くエントランスの空間には
上部の吹き抜けから差し込む光と
オブジェのような照明と壁面に落ちる影
階段の下には二層吹き抜けの空間を持つラウンジがあり
磨きの御影石は空間を拡張するようで
その時は私一人。この空間と風景を独り占めにして
大和文華館が開館していたら、ここへは訪れなかったかも
チェア S-5007 という名の赤い椅子に座り、静かな時間を
楽しんで。もちろん所蔵された作品もたどり
白から黒への濃淡の世界にもひかれつつ
巨匠達の足跡も確かめて
茶室の設えも学びながら
ラウンジを後にして散りばめられたデザインをたどり
足元のタイルの納まりにも目が留まる
エントランスのフロアの洋画展示室には
近代を代表する画家の作品の数々
賑やかな食卓は駒井哲郎によって
色と形と構成と、不思議な世界観の作品は
元永定正によるもの。関西にゆかりのある作家は

宝塚市に拠点をおいて世界的な存在に

子どもたちに読みきかせた、もこもこもこが懐かしい

そういえばと自宅にあるアートカードセットを見返せば
京都国立近代美術館所蔵のZZZZZも氏の作品
そして展示室の中央で、赤い椅子と共に存在感を放つのは
佐藤忠良による彫刻作品 若い女 夏
エントランスにある帽子という作品も、佐藤忠良によって

佐藤忠良といえば福岡の建物も思い出す

福岡銀行本店に設置されたボタンという作品にひかれている

関西の佐藤忠良の作品といえば佐川美術館にも

子どもが小さい時に訪れたので、彫刻までは見る余裕もなく
過去の写真で佐藤忠良の作品を。萌と書いてきざしと読む作品
水庭に立つ蝦夷鹿は

鹿との出会いでも取り上げた

そして三つ目の作品は冬の像。また滋賀への旅も計画しよう


こぢんまりとしつつも贅沢な空間と作品を満喫し
1984年に建てられた中野美術館を後にして

建物の設計は1970年大阪万博の迎賓館を手掛けた

彦谷邦一。その迎賓館の物語も今に続いている

また万博記念公園を訪れる際に

美術館を後にして最寄りの駅から帰路へ向かう、その前に


やはり旅には下調べが必要だ。旅のメインに設定して
いた大和文華館。なのに展示替えによる休館日だとは。
松伯美術館にて高まった興奮もつかの間に。その先の
中野美術館には時間があれば訪れようと思っていた。

でも旅のクライマックスがここにあったとは。光さす
エントランス。大きなガラス窓の向こうには、訪れる
ことができなかった大和文華館とそれを包みこむ緑。
水を湛える蛙股池の風景。美術館の空間を独り占めに
して赤いチェアに腰をおろし、やわらかな光が広がる
ラウンジの中で一人、ひとときの静かな時間を過ごす。

緊張感を解き放ち、一人に臆することなく、体も心も
緩めれば、見えないものも見てえてくる。そして目を
閉じ、やわらかな光に包まれて。しばらくすると新たな
来訪者。この場所をゆずるようにその空間を後にして。

ひと通り作品も楽しんで、過去に訪れたアートのこと
も思い浮かべつつ、大和文華館に再訪する際には、また
訪れてみようと思う。佐藤忠良の作品にもまた会いに。


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