そして心地のよい場所で静かな時間を
松伯美術館に広がる動きのある空間を後にして
奈良の西側をめぐる旅も終わりへと。松伯美術館の
存在は知っていたが、内部の空間を初めて体感した。
30年前に建てられていても、思いが込められた建物に
感動して、旅への名残りを惜しみつつも次の目的地へ。
宝塚市に拠点をおいて世界的な存在に
子どもたちに読みきかせた、もこもこもこが懐かしい
佐藤忠良といえば福岡の建物も思い出す
関西の佐藤忠良の作品といえば佐川美術館にも
鹿との出会いでも取り上げた
建物の設計は1970年大阪万博の迎賓館を手掛けた
彦谷邦一。その迎賓館の物語も今に続いている
また万博記念公園を訪れる際に
やはり旅には下調べが必要だ。旅のメインに設定して
いた大和文華館。なのに展示替えによる休館日だとは。
松伯美術館にて高まった興奮もつかの間に。その先の
中野美術館には時間があれば訪れようと思っていた。
でも旅のクライマックスがここにあったとは。光さす
エントランス。大きなガラス窓の向こうには、訪れる
ことができなかった大和文華館とそれを包みこむ緑。
水を湛える蛙股池の風景。美術館の空間を独り占めに
して赤いチェアに腰をおろし、やわらかな光が広がる
ラウンジの中で一人、ひとときの静かな時間を過ごす。
緊張感を解き放ち、一人に臆することなく、体も心も
緩めれば、見えないものも見てえてくる。そして目を
閉じ、やわらかな光に包まれて。しばらくすると新たな
来訪者。この場所をゆずるようにその空間を後にして。
ひと通り作品も楽しんで、過去に訪れたアートのこと
も思い浮かべつつ、大和文華館に再訪する際には、また
訪れてみようと思う。佐藤忠良の作品にもまた会いに。