見出し画像

色あせながらも美しくある建築

画像17

昨秋のおだやかな日のこと。サイクリング
日和なので、嘉麻市にある美術館に向かう。
博多からは、篠栗の山を越えていく道のり
で山々に囲まれた気持ちのよい風景を進む。



画像18

1996年に炭鉱跡に建てられた碓井琴平文化会館
は嘉麻市立織田廣喜美術館を含む4つの文化施設
で構成された複合施設。設計者である徳岡昌克氏
の建築に取り組む信条は素材と建築とのことで、
素材を生かした風景になじむ設計がなされている。
家型を示す切妻屋根の安心感のある佇まいである。


以前、滋賀にあるブルーメの丘にも織田廣喜氏の
作品を展示する美術館があったが、今は休館して
いる様子。設計は安藤忠雄氏で、日没閉館の名
の通り、照明のない自然光のみの美術館である。
またいつか再開することがあれば訪れてみたい。



画像4

安心の家型の形状。中央の赤いニッチのような飾りが
アクセントとなる。目地の割付にこだわりを感じる。



画像9

外壁には吉祥の文様である青海波が一面に描かれる。
模様部分は金物を用いた出目地。驚きの外壁である。




画像16

画像2

画像3


外壁は漆喰の赤と白と灰色で構成され、
足元には緑色の笹が植えられている。
色の取り合わせは派手だが、自然素材
により馴染んだ印象を受ける。また、
屋根には黒色のスレート石が用いられ、
建物全体に落ち着いた雰囲気を与える。


それぞれの素材は年を経ていくうちに、
徐々にくすみがかっていく。そして建物
は時間をかけて老い、場所に馴染んでいく。
経年により育っていく建物に魅力を感じる。



画像6


ホールは、白を貴重した明るく開放的な空間がある。
ハイサイドライトからは柔らかな光が取り込まれる。




画像7

美術館としては、こじまんりとした平面計画である。
前面の芝生広場、周囲の山並み、高低差のある敷地に、
ゆったりとした計画。ゆっくりと時間が流れている。



画像8

資料閲覧室のガラス窓から、前面の芝生広場を一望する
ことができる。広がる青い空、連なる山並みが美しい。



画像5

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15

屋外には様々な彫刻が点在している。広い空の下、
ゆっくりと見てまわる。とても贅沢な空間がある。



画像10

織田廣喜氏から、妻のリラさんへの句が刻まれている。
二人三脚での創作活動、妻への思いが込められている。


自然に囲まれた豊かな場所。広い敷地にゆったりと
佇む美術館や彫刻。おだやかな午後の日を過ごす
ことができた。さて、もう一度、山を越えて帰ろう。


いいなと思ったら応援しよう!