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色あせながらも美しくある建築

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昨秋のおだやかな日のこと。サイクリング
日和なので、嘉麻市にある美術館に向かう。
博多からは、篠栗の山を越えていく道のり
で山々に囲まれた気持ちのよい風景を進む。



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1996年に炭鉱跡に建てられた碓井琴平文化会館
は嘉麻市立織田廣喜美術館を含む4つの文化施設
で構成された複合施設。設計者である徳岡昌克氏
の建築に取り組む信条は素材と建築とのことで、
素材を生かした風景になじむ設計がなされている。
家型を示す切妻屋根の安心感のある佇まいである。


以前、滋賀にあるブルーメの丘にも織田廣喜氏の
作品を展示する美術館があったが、今は休館して
いる様子。設計は安藤忠雄氏で、日没閉館の名
の通り、照明のない自然光のみの美術館である。
またいつか再開することがあれば訪れてみたい。



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安心の家型の形状。中央の赤いニッチのような飾りが
アクセントとなる。目地の割付にこだわりを感じる。



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外壁には吉祥の文様である青海波が一面に描かれる。
模様部分は金物を用いた出目地。驚きの外壁である。




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外壁は漆喰の赤と白と灰色で構成され、
足元には緑色の笹が植えられている。
色の取り合わせは派手だが、自然素材
により馴染んだ印象を受ける。また、
屋根には黒色のスレート石が用いられ、
建物全体に落ち着いた雰囲気を与える。


それぞれの素材は年を経ていくうちに、
徐々にくすみがかっていく。そして建物
は時間をかけて老い、場所に馴染んでいく。
経年により育っていく建物に魅力を感じる。



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ホールは、白を貴重した明るく開放的な空間がある。
ハイサイドライトからは柔らかな光が取り込まれる。




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美術館としては、こじまんりとした平面計画である。
前面の芝生広場、周囲の山並み、高低差のある敷地に、
ゆったりとした計画。ゆっくりと時間が流れている。



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資料閲覧室のガラス窓から、前面の芝生広場を一望する
ことができる。広がる青い空、連なる山並みが美しい。



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屋外には様々な彫刻が点在している。広い空の下、
ゆっくりと見てまわる。とても贅沢な空間がある。



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織田廣喜氏から、妻のリラさんへの句が刻まれている。
二人三脚での創作活動、妻への思いが込められている。


自然に囲まれた豊かな場所。広い敷地にゆったりと
佇む美術館や彫刻。おだやかな午後の日を過ごす
ことができた。さて、もう一度、山を越えて帰ろう。


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