うつわと空間への旅をもう一度
ほしだの森を後にして、今回の旅はさらに南へと進む。
しばらくすれば県境を越え奈良県へ。大阪、奈良、京都
は関西の地にて、きゅっと密集している感じで自転車
でも楽しくめぐることができる。そして次に訪れたの
は、九州にいた頃から気になっていたうつわのお店。
九州でふれたうつわの世界。その楽しみをもう一度
ほしだの森を後にして、山を越えて
お店の名前は、草々。暮らしの中で、身近なものである
うつわを届けるお店。毎日手にとって、その形や感触
を感じるうつわ。場所は生駒市の高山町の古いビルの
一角を改修し、2022年4月にオープンされた。新しい
お店ながらも長い時間をまとった空気感。ドアを開け
ると、様々な情報が目の前に飛び込んでくる。お店の
中の写真もとってよいとのことで、空間を体で感じる。
九州ではお酒にも。関西でもお酒への旅を続けよう
店主のきょうこさんは、神奈川から奈良へ移住されて
生駒の地に、うつわのお店を開かれた。その行動力と、
作られた空間や、扱われるうつわの数々に感動しつつ、
うつわのお話をうかがった。自転車での旅の途中でも
お土産に、小さな鞄に入る畑中篤さんのぐいのみを。
この5月には畑中篤さんの個展も
九州で出会った井上尚之さんのお皿も思い出して
小さな喜びを感じたり
つばき文具店のことを思い出したりも
何気ない日々であるからこそ、その連続の中に、際立つ
ものが見えてくる。小さな違いに気づくことができた
なら、世界が広がる気がする。自分が見ているものは、
自分の意識の中にあるもの。意識の外に目を向けて。
外観からは、はかることのできない内部空間。ドアを
開けてみなければ感じることはできない。スペースは
限られていても奥行きが感じられた。うつわはひとつ
ひとつ丁寧に並べられ、それぞれの空間を作っている。
しんとした空気。壁の時を経た風合い。素材が物語る
時間。草々というお店の名前にこめられたリズム感。
その日、先客がいらっしゃった。その方は、同じ器を
4枚購入されて、これから親元を離れる4人の子ども
たちに渡すのだという。器は同じようで同じではない。
それぞれの個性をもった器たち。人それぞれに個性が
あるように、そのうつわの違いは個性となり、それぞれ
のこどもたちの宝へとなるに違いない。素敵なお話も
聞くことができ、晴れやかな気分で草々を後にして。
また奈良への旅で訪れようと思いつつ、次の目的地へ。