建物と木々の間のゆるやかな関係
3月の週末は、続けて出かけることができた。
気持ちのよい春の訪れ。天気は上々の様子だ。
それならば自転車を電車に乗せ、旅にでよう。
九州は、自然に食に文化に、魅力で溢れている。
今回目指したのは福岡県の南部に位置する柳川。
柳川といえば、川下り、水郷の景色、そしてうなぎ。
想像しただけで幸せな気持ちとなる。ともあれ、
よい風景と食を目指そう。いけばきっとわかる。
ということで、いつものごとく博多駅で自転車と
共に電車に乗り、まず降り立ったのは筑後船小屋。
この駅のすぐそばには、九州芸文館が建っている。
2013年に建てられた九州芸文館にアネックスがあり、
教室工房として利用されている。こちらを設計したの
は株式会社SUEP。末松弘和氏と末松陽子さんにより
様々なデザインの建物が生み出されている。先日の
佐賀の旅でも、おもしろい建築に出会うことができた。
SUEPの掲げるコンセプトに有機的な空間体験という
ものがある。自然の秩序を取り入れ、自然と共存する
建築は、柔らかく有機的な空間を含有し、豊かな感性
を呼び、活き活きとした体験を生むと語られている。
たしかに建物がつくる空間や、建物から見える風景に
よって、得られる体験は大きく異なってくると思う。
アネックスは、そこに生えている楠と共存するように
建てられている。樹木の根を避けるため基礎を小さく、
床を浮かす計画とし、構造体である壁柱から吊り下げ
られるようにコンクリートの屋根が掛けられている。
向こうには九州芸文館が見えている。九州芸文館の
デザインと呼応するような自由で有機的な形の建物。
壁はガラスで構成され、視覚的にも木々と一体となる。
コンセプトにより生み出される個性的な空間がある。
TOTO ギャラリー間にて2022年6月8日~9月11日の間
「末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture自然を受け入れるかたち」
が開かれている。コンセプトから自然と共にあり、
環境を意識することのできる空間が立ち上がる。
建築にはいろんな可能性があると感じている。