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自分で服を選べない

私はもう大人だが、完全に自分1人で選んだ服をいくつかしか持っていない。

自分が「着たい」と思った服が本当に自分に似合うのかに確信が持てないまま今日まで来てしまった。

服を選ぶときに、どうしても他者、特に母の意見を聞かなくてはいけない、という強迫観念のようなものに襲われてしまうことが大きな原因だと思う。いつも着てみたい!と思った服の意見を聞いたときに、「スタイルに合わない」「色が変」「あなたっぽくない」などの意見が返ってくるとすぐにその服を諦めてしまう。もういい年だから服くらい自分で着たいと思ったものを着ればいい。頭では理解していても、何かが引っかかって意見を仰いでしまう自分がなんだかとても嫌いで、情けない。

中学生の頃、母と買い物に行ったときのこと。私はそのとき好きな人がいて、それまで興味のなかった華やかな服に挑戦してみたいと思っていた。そこで首元にビジューのついた、涼しげなギャザー生地のブラウスを勇気を出して着てみたいと母に頼んでみた。しかし、「あなたっぽくない」の一言で却下されてしまった。あの時の心臓に重りが乗っかったような気持ちが今も忘れられない。その一言は「こういう格好は自分には向いていない」「自分にこういう服は似合わない」という呪いを作るきっかけになった、かもしれないしそうじゃないかもしれない・・・でも確実に自分の中にこれは似合わない、という決めつけを作るきっかけにはなったと思う。

母親の「似合わない」の一言にここまで絶対的な力を感じてしまうのは、良くも悪くも「一番自分を見てきた人」としての信頼があるからではないかと思う。やっぱり、人は社会の中で生きていてどうしても誰かの目を自分の中に取り込んで化粧をしたり、服を選んだりするものだ。だから、その一番信用できる他者の目線として母親の意見にいつまでも頼ってしまっているんじゃないだろうか。

もちろん他者からの客観的な意見はとても大事なものだと思うし、それを全て跳ね除けるのはあまりにも乱暴だと思う。でも、誰かと話すときに自分の言葉で、誰かの変わりたいとか挑戦したい、とかそういったやる気?のようなものを踏んでぐちゃぐちゃにしてしまうような言葉は言わないように気をつけたい。ぐちゃぐちゃになった自分の気持ちを整えるのは、とてもエネルギーがいる上にしんどい。

誰かに言われたことを鵜呑みにしすぎるのも良くないけれど、自分に言ってくれることは大事な一つの意見でもある。むずかしい。自信を持って自分の服を選べる日は来るんだろうか・・・。私は今喪服を探しているのでひとまず自分で選ぶ練習をしようと思う。他人の意見を聞くことになるかもしれないし、自分1人で選ぶかもしれない。納得できたらいいなあ。

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