盲点で説明する目の構造:話の盲点は言い訳にはならない
話の盲点だったね、なんていう表現をよく使いませんか?
いったいこの盲点とは何なんでしょうか?
今回はこの盲点のお話をしたいと思います。
「盲」という漢字の原意は
1.目が見えないこと。その人。2.文字が読めない人。です。
目が捉えられなかった点とう意味として、言葉としては通用してしまいます。しかしこれは、「盲点」という本当の視覚現象があり、それを例えた表現なのです。
まず盲点を実際に体験してもらいましょう。下の図を見てください。
左目を閉じ、十字のマークを右目だけで見ます。十字のマークに視点を置いたまま、視野の片隅に黒い丸の存在を確認します。
そのままゆっくりディスプレイに近づいてください。
するとある一定の距離(だいたい20~30cmくらい)で、この黒い丸●が消えるポイントがありませんか?
これが「盲点」です。ほんとにある現象なのです。
盲点を説明するには目の構造を明らかにする必要があります。
下の図をご覧ください。
まず光は無色透明の角膜をから入射し、水晶体を通って、網膜で像を結びます。水晶体の前には、虹彩があり瞳孔の大きさを調整します。
瞳孔の大きさにより、光に目が入射する量が調整されます。周りが明るくまぶしいときは瞳孔が小さくなり光の入射量を減らし、暗い場合瞳孔を大きくし光の入射量を増やします。
トンネルを抜けた直後、目に少し痛みを覚えまぶしく感じるのは、瞳孔が大きく開いた状態で強い光を受けるからです。
また、水晶体は近くのものを見るときにはふくらまし、遠くのものを見る場合は薄くし、大きさを調整、中心窩で結ばれる像のピントを合わせています。
この水晶体の弾力性が弱くなるのが老眼とう現象で、遠く・近くのものを瞬時に切り替えて見分けることが困難になります。
中心窩には、色や明るさ感じる視神経が集中して配置されています。こう見ると、とても狭い範囲ですね。
視神経は、赤色を受容するL錐体、緑色を受容するM錐体、青色を受容するL錐体、明るさを関知する桿体に別れます。
また桿体感度が高く、錐体が動作しないほどの暗いところでも関知することが出来ます。よって私たちは暗いところでは色は感じないが、光の明暗を胃感じることができますよね。
これらの細胞の一番の役割は、光エネルギーを脳が受容できる電気信号に変換することです。これはデジタルカメラの光電変換(CCD)とまったく同じ考え方ですね。
変換された電気信号は、視神経を通って脳に伝達され、人間に色や形を知覚させます。
この図を見よく見てください。像を結ぶ場所である、中心窩と視神経の位置が結構近く、視神経の面積が大きいですね。
像が少しずれて、視神経の上で結ばれたらどうなるでしょう?
そう、その下には視神経がありませんので、私たちの視野から物体が消えます。この現象のことを盲点といいます。
どうでしょう、この現象を理解して、「盲点」という言葉を使っている人はどれだけいるのでしょうか?
意外にみなさん「へぇー」になってませんか。
しかしこの「話の盲点」という表現、言い訳の中で使われることが多いように思います。「盲点だったから、誰も気付けなくても、しようが無かったね」的なニュアンスを感じます。
上の盲点を体験する実験でも感じられたと思いますが、この現象を作り出すのって難しくなかったですか?しかも、しっかりと理論に基づいた現象で、予測可能なのです。
それを考慮すると、世間での「話の盲点」という表現の使い方は、考え直さなければいけないかもしれません。
「話の盲点だったから、ちゃんと対処出来たでしょ、しっかりして」的な使い方に。
今日はこの辺にしましょう、毎回お粗末様です。
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