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■第5章 キャラクターの真髄、テーマの作り方(約1万字)
○感動とキャラクターの関係
前章において「感動とは何か?」ということについて、考察しました。
私が定義する感動をあらためて書くと下記の2種類です。
①キャラクターを通して、受け手のモヤモヤが晴れる(心の中にある矛盾、葛藤、抑圧が昇華される)。
②受け手が心の中に切実に願っている「あるべき姿」が具現化される。
①は、主体キャラクターの内的な気づきや成長を通して、受け手も擬似体験することで起こるものです。
②の場合は、受け手が持っている世界観(世界がこうあって欲しいという思い)が現実化することで起こります。
受け手の感覚としては、①も②も、モヤモヤが晴れてスッキリしたり、救われたと感じたり、それまでの私とは違う、新たな視座を得て自分という存在が更新されたような感覚を得られるというものです。
それとは少し違う、クライマックスで感じる感情の高まりは、予測誤差による興奮と呼び、私は感動とは切り分けています。
もちろん、感動と興奮が重なることはあります。驚きや達成感など興奮が大きく、同時に何かモヤモヤが晴れるようなクライマックスが描かれることはあるでしょう。特に②の場合においてそれが起こりやすいです。
ただし、派手なクライマックスシーンが描かれれば感動できるかというとそうではありません。大切なのは物語の主体がそれをどのように受け止め、どのように変化するかです。自分の存在や感情を重ねられるキャラクターがいないと遠い出来事、単なる情報で終わってしまうのです。
私は、興奮はストーリーによって、感動はキャラクターによって起こるという考えを持っていますが、しっくり来ない人もいるかもしれません。そもそも多くの人が、感動と興奮を一緒のものと捉えています。
もちろん、感動や興奮は、完全には定義しきれません。同じ物語や同じシーンでも、すべては受け手次第だからです。
しかし、だからと言って、やみくもに考えるのではなく、感動と興奮は別物だと分けて考え、それぞれに見合ったアプローチを取るべきです。ある程度の矛盾、余白は許容しつつも、「型」として追求することで、確実に作り手が描きたいものを実現させる力になります。
また物語を探究していくほどに、最終的にはストーリーではなくキャラクターに行き着くというのが私の考えていることです。
ストーリーとキャラクターは相互に影響し合うものではありますが、作り手が魂を込めるのはやはりキャラクターになってくるからです。
この本では序盤から「CQ」「ドラマカーブ」といった概念を手段として取り入れ、ストーリーの作り方、キャラクターの作り方と探究してきました。前の章において「感動とは何か」について理解が深まってきたところで、この章では、もう一度人を感動させるという意味でのストーリーやキャラクターに向き合い、そこから物語における世界観やテーマについて探究していきたいと思います。
○感動の鍵を握るのは「ストーリー」よりも「キャラクター」
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